今、注目される日本のデザイナー達Ⅱ~森永 邦彦(もりながくにひこ)~

「日常と非日常」を感じたとき、すべてが始まった


森永 邦彦氏 参照:https://vantan.jp/interview/k_morinaga/

森永邦彦氏が手掛けるブランド「ANREALAGE(アンリレイジ)」。このブランド名は「A REAL -日常、UN REAL-非日常、AGE-時代」という意味から名付けられた名称です。森永氏は、まだ大学に在学中からこのコンセプトを固めていたと言います。ブランドの立ち上げから現在に至るまで、彼の服づくりに大きく影響している「日常と非日常」とはどうのようなものなのでしょうか。

予備校での出会いが運命を変えた

森永氏は1980年、東京国立市の生まれ。高校生の頃にはおしゃれに目覚めて、当時ブームだった「裏原宿」へと通っていたと言います。しかし、まだ「デザイナー」という職業は意識になく、高校3年生になると予備校に通って受験に備えるようになりました。
運命を変える出会いは、意外にもその予備校で起こります。通っていた予備校の講師が個性的な人で、元教え子の大学生が作った服を授業で紹介したのです。その服は、自由な発想に溢れていて、森永氏は強い衝撃を受けたといいます。そして、その大学生に「弟子入り」を願い出たのです。その大学生とは、後に「ビームスクチュール」のクリエイティブディレクターを勤め、映像作家としても活躍する神田恵介氏でした。
もちろん、神田氏は断ったようですが、森永氏は彼の後を追うように同じ早稲田大学へと進学します。そして、この予備校という「日常」と、神田氏のつくる衝撃的なファッションという「非日常」こそが、「アンリレイジ」のコンセプトの礎になったのです。

他のブランドとは違うことをやる

大学に在学中も、服づくりのことを考え続けていた森永氏は、自分のブランド設立を強く考えるようになっていきます。そのためには、服づくりの基本を知る必要があると思い、ダブルスクールとして入学したのがバンタンでした。
森永氏がバンタンで学んだのは、技術はもちろんですが服づくりにおいて、基本的で重要な考え方も多く教わったと言います。中でも、「服をきちんと作れないとブランドなんか作れないから、まずはしっかり技術を身に付けよう。そうしないとほんの数ミリずれるだけでも、洋服の伝わり方が変わってしまう」という教えは、ブランドの拡大に大きく影響していきます。
大学卒業後、すぐに3人の仲間で立ち上げた「アンリレイジ」の初期には、数百枚の布を使ったパッチワークや、5000個のボタンを縫い付けたジャケットなど「手仕事」によって製作して、他のブランドとの差別化を進めていました。正確な手仕事に対する情熱は、バンタン時代に培ったもの。細部にこだわることによって、「アンリレイジ」は、成長を遂げ、やがて「神は細部に宿る」という精神が現在に至るまで、ブランドに定着していくのです。
近年の森永氏の活躍は目覚ましく、コンバースやチャンピオン、フェンディなどとのコラボレーションが注目されたかと思うと、2019年3月には、LVMHモエ ヘネシー ルイ・ヴィトンが創設した「LVMH プライズ」の2019年のファイナリストに選出。2019年9月、第37回 毎日ファッション大賞を受賞するなど、高い評価を受けています。

森永邦彦氏が手掛けるブランド

「ANREALAGE(アンリレイジ)」


ANREALAGのパッチワークアウター 参照:https://www.anrealage.com/feature/detail/100003/233

森永氏が最初に設立したブランド。大学在学中の2000年に設立、大学とバンタンを卒業した2003年には会社化を果たしています。会社化をする前の2002年には青山円形劇場にてショーを開催して、注目を浴びています。2005年には東京コレクションに参加。2014年には、パリコレにも進出しました。
コンセプトである「日常と非日常」を表現するために、アイデアや技法を数年単位で変化をさせていきます。09年春夏のコレクション「○△□」では、球体、三角錐、立方体の形の洋服を発表。「形」を追求するシーズンがあったと思えば、ファッションとは異なる領域のテクノロジーや新素材を使った服づくりにシフトしたりと、常に斬新なアイデアを持ってファッション界を驚かせています。

「ANEVER(アンエバー)」


ANEVEのトレンチコート 参照:https://crosset.onward.co.jp/items?mgc=PIC&mc=PIC_00782

2021年3月から、森永邦彦氏とアパレル大手「オンワード」の協業で展開するブランドです。「一瞬=A NEVER」と「永遠=AN EVER」という対極の言葉を共存させた「ANEVER」。そのブランドコンセプトは、「花の一瞬を永遠に閉じ込めたブランド」です。
そのコンセプトの通り、透明な樹脂の中に、生きている花々が見せる一瞬の美しさを永遠に閉じ込めたジュエリーやバッグなどのアイコニックなアイテムが展開されています。また、フラワーボタンをあしらったトレンチコートなど、アンリレイジの「神は細部に宿る」の精神を踏襲したラインナップです。