今、注目される日本のデザイナーXX~工藤 司 (くどう つかさ)~

さまざまな体験をした学生時代につくられた感性


工藤司氏 参照:https://www.mensnonno.jp/post/65942/#shm-vp-1

工藤司氏は、1987年生まれで沖縄県の出身です。子供ころからファッションに興味を持ち、日本での大学生活や海外への留学やブランド勤務などを経て、2017年に自身のブランドである「kudos(クードス)」を設立、18年にはウィメンズラインにあたる「soduk(スドーク)」のコレクションも発表しています。そのほか、フォトグラファーとしてモデルの選定から撮影などもおこない、出版事業にも携わるなど、多方面での活躍も話題となっています。今回はそんな多才なデザイナーである工藤司氏をご紹介します。

おしゃれな祖母の影響でファッションに興味を持つ

阿部氏が最初にファッションへの興味を持つきっかけになったのは、共働きの両親に代わって、よく世話をしてくれたという祖母の存在があったと言います。
「うちのおばあちゃんはオーダーメイドで洋服をつくるような人で、子どもの頃はおばあちゃんに連れられてよく仕立て屋さんに行っていたんです。最初は1枚の布だったのに、2か月後にはおばあちゃんにピッタリの服になっていることが子ども心にもすごく面白くて」と語るように、おしゃれ好きの祖母にあこがれを抱き、洋服がつくられる工程にも興味を持ったようです。
高校生の頃には自分で「制服のズボンを細くしたり、シャツの丈を短くしたりして」おしゃれを楽しんだり、アメリカへの留学で日本とは違うカルチャーに触れたりと、多感な時期にさまざまな刺激を受けて、ファッションへの思いを深めていったようです。

海外での学びを糧に、日本でブランドデビュー


参照:https://qui.tokyo/fashion/afterthesunset-interview

高校卒業後は、本格的にファッションの道を目指そうとしましたが、両親の思いもあり早稲田大学へと進学。ただ、その間も洋服への情熱は衰えることなく、大学卒業後にはファッションの勉強をするために、ベルギーの「アントワープ王立芸術アカデミー」へと進学します。
「日本にいるときはあんまり友達がいるタイプではなかったんですけど、アントワープに行ったらなんかヘンな人たちがいっぱいいて、自分って超普通じゃんと思って、それがすごくうれしかったですね。友達もいっぱいできたし、自分の中でムダにとがっていた部分が取れていったような気がします」と語るように、学校は非常に恵まれた環境でした。しかし、デザインワーク重視の授業は、実技を学びたかった工藤氏にとっては予想外のことであったため1年で退学、パリに渡り実技の専門学校へと入学し直したのです。
その後は、パターンを集中して学び、パリのブランドでパタンナーとして働く機会も得ています。ただ、一方では、デザインや自分の服づくりをしていなかったことに気づいた工藤氏は、日本への帰国を前に自分でデザインした服を作成し、自ら撮影したフォトブックを制作しました。
そして、帰国後に工藤氏の運命は急転直下の展開を見せます。そのフォトブックを見せたファッション誌「FREE MAGAZINE」の編集長から服づくりのセンスを買われて、予期せぬスピードでブランドデビューを果たすことになったのです。その後「kudos(クードス)」と名付けたブランドは若者を中心に人気が高まり、多くのショップで取り扱われるようになります。

フォトグラファーや出版など、マルチに活躍する才人


参照:http://freemagazine.jp/kudos/

ファッションデザイナーとして、自らのブランドを設立した工藤氏ですが、ブランドの写真撮影も自らこなすフォトグラファーとしての一面も持っています。そして、最近では出版レーベルも立ち上げるといった、マルチな活躍も話題。ここからは工藤氏の活動における考え方を探っていきましょう。

不完全なモノにこそ魅力を感じる


参照:https://www.mensnonno.jp/post/65942/#shm-vp-9

工藤氏は服づくりをするときに、「不完全なモノにこそ魅力を感じる」と言います。メンズで言えば、テイラードのように、製法が確立されているものよりも、少し「外した」ものが好みのようです。
「あえて全てのルールを少しずつ壊すことを心掛けています。でも、結局フィッティングで着せて『カワイイ』と素直に思える感情を大事にしているんですけどね(笑)」と言うように、既成概念を取り払い、ある意味直感的に服づくりをおこなっているように思えます。不完全性こそが人間性であり、洋服にそれを求めることによって、人間と洋服がお互いの不完全さを補えるのかもしれません。

『服は服』という考え方

そして、「僕は『服は服』という考え方で、服は結局プロダクトでしかなくて、その服を人が着て初めて成立すると思うので、洋服がハンガーに掛かっているのを見てもあまり魅力的に感じないんです」と言う言葉でもわかるように、工藤氏は人間が着てこそ、洋服の価値があると考えています。
また、「KUDOSを着せることによって、自分自身の可能性に気付いていない人が変わってくれることで、僕自身の存在意義を感じる」とも語っていて、工藤氏は、自分のブランドが多くの人の可能性を引き出すポテンシャルを持つことを目指していることがわかります。
このように工藤氏が発揮するクリエイテビィティこそが、多くの人を惹きつける魅力であり、そのエネルギーは今後もさらに大きくなってゆくことでしょう。