今、注目される日本のデザイナーXXII~尾花 大輔 (おばな だいすけ)~

古着に魅了されたファッションデザイナー


尾花大輔氏 参照:https://www.mistore.jp/shopping/feature/men_f2/creatorscontemporary210118f2_m.html

尾花大輔氏は1974年、神奈川県相模原市の生まれです。中学生の頃からアメリカンビンテージに興味を示して、一貫して古着のテイストを持ち続けるデザイナーとして知られています。そして、自身が立ち上げたブランド「N.HOOLYWOOD(N.ハリウッド)」は、2022年に創立から22周年を迎え、ますますファッション界に衝撃を与え続けるブランドとして注目されています。今回は、そんな個性派ファッションを創造するデザイナー尾花氏をご紹介していきます。

高校生で古着のスペシャリストに

中学生時代の頃の尾花氏は、同じ年頃の少年たちと同様に、おしゃれに対して興味を持ち始めたときでした。ただ、ほかの同級生たちとは少し違い、「自分のスタイル」を追求することに非常に熱心だったといいます。
そこで思いついたのが、中学生の所持金程度でも満足のゆくスタイルを構築できる「古着」を購入することでした。そして、尾花氏の周囲には、その環境も整っていました。住んでいる地域が古着屋の多い町田に近く、さらに少し遠出をすれば、厚木のアメリカ軍基地からの払い下げが安価で販売されている店もありました。
高校生になると、古着好きが高じてバイト先のインポートセレクトショップで、デッドストックのスニーカーなどを自分で買って販売するなど、バイヤーのようなことまでおこなっていました。その知識は相当なもので、高校生ながら当時流行していた「Boon」という雑誌でオールドコンバースの解説をする程でした。

バイヤーからデザイナーへ


参照:https://jackinthenet.jp/2021/07/10/18235/

高校卒業後、一時は父親の影響で車関係の道を目指した尾花氏でしたが、やはり、ファッションへの思いは断ち切れずに服飾の専門学校である「メンズファッション専門学校」へ進学。しかし、服づくりよりも、「古着」への思いが強く、退学後に原宿の有名ヴィンテージショップでバイヤーとして働くこととなりました。
わずか、1年ほどで、その実力は発揮され、買い付けた商品は次々に評価されます。その勢いで、独立した店舗こそが、当時原宿で絶大な人気を誇った古着屋「ミスターハリウッド」でした。当初は買い付けたものをそのまま販売していましたが、次第にリメイク品も手掛けるようになり、自らデザインしたアイテムを販売。それらも大きな話題となったことで、尾花氏は、「N.HOOLYWOOD(N.ハリウッド)」というブランドを創立することにしたのです。

新型コロナ感染症の蔓延をきっかけに変化した「やり方」


参照:https://jackinthenet.jp/2021/07/10/18235/

「N.HOOLYWOOD(N.ハリウッド)」は、ブランドの立ち上げから多くのファンに支えられて東京コレクションで成功を収めます。しかし、尾花氏はそれに満足すること無く、ヴィンテージの本場アメリカへ進出。NYコレクションに参加し、世界からも注目を浴びることに成功しました。そして、現在においても尾花氏は、フォーマルラインの展開や2020東京オリンピックでの聖火リレーユニフォームデザインなど、多方面での活躍を続けています。

時代に即した変化を

新型コロナウイルスの影響を受け続けている現在の社会で、尾花氏が率いる「N.HOOLYWOOD(N.ハリウッド)」では、ショーをおこなわずに、映像や画像でのコレクション発表へと変化しています。
しかし、「この時代だから」という考え方はあまりなく、「世界中の人によりよいカタチで見てもらえるルック画像を選ぶ」という、ごく単純な理由でこの方法を選択したといいます。いままでの「ショーだから、こうでなければいけない」という概念を捨て去り、「何をしても良い」という感覚がコロナ禍の直前からあり、ショー以外の発表に結びつきました。
時代に即して変化していくことは、デザインに関してはもちろんですが、その見せ方にも言えること。尾花氏は、それを決断し実行したと言えるでしょう。

ユニフォームにも積極的に挑戦


東京2020オリンピック聖火ランナーユニフォーム 参照:https://olympics.com/ja/news/tokyo-2020-brand-design-uniform

尾花氏は、2020東京オリンピックの聖火リレーユニフォームをはじめ、クリニックやホテルなど、多くのユニフォームデザインも手掛けています。
「ユニフォームって着る側が思っている以上に製作する側が考えなければならないことが多いし、難しいことが求められているんです。見た目と同時に着心地、そして洗濯(クリーニング)の際、畳みやすく、直ぐにサイズが認識出来るような工夫など、オペレーションのところまで紐づけて考えた上でデザインを構築していかないと成立しないものなので」とユニフォームづくりの難しさを語ります。
単純な比較はできませんが、統一感や機能性などを考慮するユニフォームデザインは、既存の洋服をつくるよりも難しいのかもしれません。ただ、その難しさをクリアして良いものができたときには、「『あそこで使われているユニフォームが欲しい』って言われたときは嬉しいです」というように、大きな達成感があるようです。
2021年にブランド創立20周年を迎えた「N.HOOLYWOOD(N.ハリウッド)」。古着のテイストを活かした個性的なデザインは、カジュアルはもちろん、フォーマルやユニフォームなどさまざまなシーンで、現在でも大きな注目を浴びています。