今、注目される日本のデザイナーXXV~落合 宏理(おちあい ひろみち)~

「洋服が好き」という思いがブランド設立につながった


落合宏理氏 参照:https://www.fashionsnap.com/person/ochiai-hiromichi/

落合宏理氏は、1977年東京の生まれのファッションデザイナーです。1999年に文化服装学院を卒業後、テキスタイル会社での勤務を経て、2007年に自身のブランドである「ファセッタズム」を設立しています。2013年には第31回毎日ファッション大賞の新人賞を受賞。それ以降、リオ五輪閉会式「フラッグハンドオーバーセレモニー」の衣装製作を担当や、日本人で初めて「第3回 LVMH Young Fashion Designers Prize(LVMHプライズ)」のファイナリストに選出されるなど世界から注目を浴びています。若い頃から「洋服が好き」という思いが強く、その思いが高じて自身のブランドを設立したという落合氏。今回はそんな独自のセンスを世界で発揮し続けている同氏について、ご紹介していきます。

少年の頃見た映画にインスパイアされた発想

映画好きな少年だった落合氏は、小学生から中学生にかけて、さまざまな映画を観て感性を培ってきたといいます。例えば、中学生時代に観たという『ターミネーター2』。主演の少年エドワード・ファーロングの格好がすごく好きだったそうで、映画で身につけていたのと同じものを、必死に探して購入していました。
そのほかにも、『グーニーズ』や『エレファント』なども好きだったそうで、そういった作品から若者文化やさまざまなカルチャーへと興味を広げていったいったのです。その経験は、現在の特徴的なデザインにも十分に活用されていて、落合氏自身が「映画で観た空の色や光、悲しさの先にある背景、 そういう美しさや瞬間というものを大切にしたい」と語るように、「ファセッタズム」というブランドの大きな魅力となっているのです。

20代で独立することが目標だった


参照:https://www.fashionsnap.com/brand/facetasm/

少年時代から、さまざまなカルチャーに興味があった落合氏は、洋服が好きだったことも相まって、カルチャーを洋服で表現したいと思うようになります。
デザイナーの登竜門とも言うべき文化服装学院を卒業後は、テキスタイル会社ギルトワークへ入社。モードを中心としたブランドのテキスタイルを扱う会社で、デザイナーのコンセプトに対して一緒に服作りを考えるという仕事をしていました。ただ、「20代のうちに独立したい」という気持ちが強く、29歳で「ファセッタズム」を設立しました。
もちろん、最初から順風満帆の滑り出しというわけではありませんでした。経済的にも精神的にも追い詰められた時期があったといいます。しかし、落合氏の「洋服が好き」という思いの強さ、そして、さまざまなカルチャーに触れて培われた独創性は、次第に多くのバイヤーの目にとまることとなり、東京はもちろん、ミラノ、パリといったファッションの発信拠点でも人気を博すこととなったのです。

世界的な評価を得た落合氏が伝えたいものとは


参照:https://store.facetasm.jp/collection/2022ss

第31回毎日ファッション大賞の新人賞受賞を皮切りに「第3回 LVMH Young Fashion Designers Prize(LVMHプライズ)」のファイナリスト選出など、数々のコンクールで知名度を得た落合氏は、世界的な活躍の場を得ています。その原点は、モードとストリートの融合であると言われています。

トウキョウから発信するさまざまな複合カルチャー

少年時代から触れてきた、さまざまな欧米を中心としたカルチャーと、東京に存在する東洋的なカルチャー。落合氏のデザインはそれらをミックスし、再構成して発信していると評されます。
「街には色々な人が行き交っていて、男性は強さだけじゃなくて女々しさも持っているだろうし、逆に女性ならではの強さもある。女性の服を男性が着るという単純なものではなくて、感情のクロスジェンダーというか。三つ編みの男の子がいたり、逆に女の子がショートカットで男っぽいメイクだったりとか、色々なものが自由に混ざって不器用な感じ」と、落合氏が語るように、ストリートから発想を得て、それをモードへと昇華させることこそ、彼が手掛けるデザインの真骨頂だと言えるでしょう。

コンビニの衣料品にも挑戦


「コンビニエンスウェア」のイメージ 参照:https://www.fashionsnap.com/article/2021-03-01/familymart-hiromichiochiai/

ファミリーマートで販売している衣料品ブランド「コンビニエンスウェア」。落合氏はこのブランドのデザインも手掛けています。コンビニの衣料品とモード系のデザイナーと聞けば、あまり相性が良くないようにも思えますが、それはまったくの杞憂。
「リオ五輪の閉会式のセレモニー衣装を作って以降、ファッションの可能性を広げることの重要性を考えるようになっていた」と自身が語るように、コンビニの利便性を生かしつつ、デザイン性や素材を吟味した同ブランドは、大ヒットを記録し、2021年グッドデザイン賞も受賞しています。
ステージを問わず、さまざまな視点でファッションを考える落合氏。その原点はさまざまなカルチャーに触れてきた感性にあります。その柔軟な考え方は、これからも世界的なデザイナーとして多くのスタイルを生み出していくことでしょう。