今、注目される日本のデザイナーXXVI~橋本 祐樹(はしもと ゆうき)~

海外での経験がグローバルな視点のモードを生んだ


橋本祐樹氏 参照:https://www.mensnonno.jp/post/155709/#shm-vp-1

橋本祐樹氏は、1987年滋賀県の生まれ。小学生の頃からファッションに興味を持ち、デザイナーを目指して京都造形芸術大学に入学します。卒業後には、多くの世界的なデザイナーを輩出している、アントワープ王立アカデミーに留学。有名メゾンでのアシスタント経験も積み、帰国後すぐに自らのブランド「ユウキハシモト」を設立した新進気鋭のデザイナーです。2018年のブランド立ち上げ後すぐに、TOKYO FASHION AWARD 2020を受賞するなど、その才能は大きく注目されています。

身近にファッションがあった少年時代

橋本氏の両親は、地元滋賀県で洋品店を経営していました。また、祖母も呉服関連の仕事をするなど、「服」や「ファッション」というものが、非常に身近にある環境で育っています。
その影響もあり、橋本氏は小学校高学年の頃から洋服に対して興味を持ち始めたといいます。年齢が進むに連れて、当時流行したブランドの服を着るようになっていきましたが、具体的に「ファッションデザイナーになる」という目標は持っていなかったようです。

海外への留学と有名メゾンでの修行時代


参照:https://www.fashion-press.net/collections/15198

自分の将来に対しての道が明確になってきたのは、京都造形芸術大学へ進学してからだったといいます。洋服への興味が高じて選んだ同大学では、服づくりはもちろん、それ以外にも芸術的な講義によってデザイナーへの夢が形成されていきました。
それをさらに強固に、具体的な目標としたのが、海外での経験でした。多くのデザイナーやアーティストを輩出するアントワープ王立アカデミーへ留学し多くのことを学び、また、ラフ・シモンズなどの有名メゾンでのアシスタントを務めたことが橋本氏に多大な影響を与えたのです。そして、帰国の翌年2018年に橋本氏は、この学びや経験を活かし、すぐに自らのブランドを設立しました。

「ニュー・オーダー」がブランドコンセプト


参照:https://www.fashion-press.net/collections/gallery/65750/1141799

ブランド設立からわずか2年でTOKYO FASHION AWARD 2020を受賞、大いなる注目を浴びた「ユウキハシモト」。そのコンセプトは「ニュー・オーダー」です。その意味は、単に新しいものを生み出すことではありません。いままでの歴史や伝統を学び、そこから得たものを新たなモードへと昇華させてゆくというのが、橋本流の「ニュー・オーダー」なのです。

ファッションの歴史や伝統に敬意を払う

例えば、2022年の春夏コレクションのテーマは、1950年代に建築家のル・コルビジェが手がけたインドの都市チャンディーガルの都市計画と、『ミステリー・トレイン』という映画をモチーフにしたものだといいます。
1950年代のスタイルを2000年代に再構築するという、まさに「ニュー・オーダー」というコンセプトに則したテーマを展開したのです。
また、橋本氏のこだわりである「ジャケット」も、歴史や伝統に敬意を払う同氏らしいアイテムと言えるでしょう。「ブランドとしては遊んだピースだけでなく、自分より上の世代にも響くようなピースが必要だと思っています。また生活の中にはカジュアルだけでなくフォーマルなシチュエーションがあり、ジャケットがマストになってきます。そんなとき、自分が着たいと思うのはクラシックなテーラーがつくるものではなく、ファッションブランドがつくるテーラードジャケットです」と、その思い入れを語ります。
その言葉のとおり、ユウキハシモトのジャケットは、ジャケットの襟裏の表地と芯地を縫い合わせる部分を手作業にするなど、本格的なテーラード技術を駆使したアイテムになっているのです。

プロセスにもこだわりを持つ


参照:https://www.fashion-press.net/collections/gallery/65750/1141799

橋本氏のデザインでは、ときに前衛的とも言えるデザインも見受けられます。しかし、いくら見た目が現代的なデザインでも、その根幹はファッションの歴史や伝統が感じられるコンセプトに裏打ちされたものなのです。
見た目だけではなく、洋服の構造をしっかりとつくり、デザインからパターン、縫製まで、すべてのプロセスに自らのコンセプトを表現するためのこだわりを持つ。それが橋本氏のスタイルです。
「自分はアーティストではないんですが、若い世代にとって僕の服が、考え方の刺激になったり、何かをスイッチできる素材になったらうれしいです」と、語る橋本氏。若手デザイナーの中でも、大いに期待されている一人として、これからも注目していきたいデザイナーです。