ファッションデザイナーの役割、重要性、仕事の流れ、一緒に働く人たち、ファッション業界の問題など、シリーズで見てきましたが、今回お伝えするのはファッションデザイナーを目指す人が学校でどんなことを学ぶのか?ということ。
ファッションの専門知識を学ぶことができる学校は、ファッションデザイナーとして活躍したいと考える人々を広く受け入れています。
ファッションデザイナーのための学校とは?
ファッションデザイナーになるための国家資格はありませんが、専門的な技術と知識が必要になりますので、まずは学校で学んで関連する企業などに就職するのが一般的です。
ファッションデザイナーを目指すことができる進路は大きく2つあります。
ファッション系の大学・短大
ファッション系の大学は4年制大学または短大です。
生地、素材、染色、織物、材料についてはもちろん、服飾の歴史やデザイン、製図の技法やファッションデザインで使用するコンピュータ技術やソフト・アプリの使い方なども幅広く学びます。
専門知識を身につけながら大学の学士も取得することができます。
ファッション系の専門学校
ファッションに特化した知識と技術を身につけることができる専門学校も全国にあります。
修業年限は1年〜4年と学校によって異なりますが、基本的には2年制が多くなっています。
例えば東京 文化服装学院の場合、コースによって年限が異なっています。
★文化服装学院のコースと年限(2022年時点)
・ファッション高度専門士科:4年制
・アパレルデザイン科:3年制
・アパレル技術科:3年制
・インダストリアルマーチャンダイジング科:3年制
・ニットデザイン科:3年制
・ファッション流通高度専門士科:4年制
・ファッションテキスタイル科:3年制
・ジュエリーデザイン科:2年制
・バッグデザイン科:2年制
・シューズデザイン科:2年制
・Ⅱ部服装科<夜間>:3年制
・Ⅱ部ファッション流通科<夜間>:2年制
2年限のコースに進んだ場合は、より早くファッションの世界でお仕事ができますね。
ファッション系大学のカリキュラム
ここでは、ファッション系学校の基本的なカリキュラムをご紹介します。
ある学校を例にしたもので必ずしもこの通りに学ぶとは限りませんが、参考になさってみて下さい。
1年次
ファッション業界での活躍を目指す人が、具体的にどのような分野で仕事をしたいのか、どのような適性があるのかを広く学びます。
・学科に共通する科目:ファッションデザインの概論、基本的な実習、染色、民族衣装など。ファッションデザインの講義を受けることもできます。
2年次
ファッションに関する歴史、文化など、ファッションの意味・意義をしっかりと考察し、視野を広げます。デザインの意識を高めます。
・学科に共通する科目:西洋のファッション史、ファッションと社会、コーディネート、パターンメーキング、ニットデザインなど。
・特別科目:ファッションデザインの実技、ファッションデザインの企画、テキスタイルデザインの実習など。
3年次
より深い専門知識を身につけていきます。
・学科に共通する科目:アパレル販売のマーケティング、縫製技術、ファッションCAD、ファッションに関連した人工工学的な考察など。
・専門科目:ファッションデザイン実習、テキスタイルデザインの実習、ファッションデザインの企画など。
4年次
ここまでに学んできたことの総まとめになります。
ファッションデザインの応用、テキスタイルデザインの応用、ファッションデザインの企画、ファッションデザインに関する演出も学びます。
卒業制作も行います。
ファッション系専門学校のカリキュラム
1年次
ファッションの基礎と色彩について学びます。
・科目:服飾に関する一般知識、デザインの基礎、ファッション画の実習、パターンメーキング、ファッションに関するコンピュータ技術の習得。
・実技:制作(スカート、ズボン、ワンピース、ブラウスなど)
2年次
高度な技術とデザインの発想力、豊かな応用力を身につけます。
・科目:本格的なファッションデザイン実習、高度なパターンメーキング、ファッションCADの実習。
・実技:制作(ジャケット、パンツ、子供服、修了作品など)
ファッション系大学と専門学校、どっちがいいの?
結論から言うと、どちらが優れているということはありません。本当にやりたいこと、なりたい将来、自分の性格、生活環境などを考えて「自分に合う方」を選ぶのが良いということになります。
在学中の違い
在学中のメリットとしては、大学であれば1年次に幅広く学んで、2年次以降で進路を決められる幅の広さがあります。
学んでみて初めて気が付くこともあるので、途中である程度方向性を変えやすいのも大学のメリットになります。
また、大学は入試があるので、試験を突破した意識の高い人が集まりやすい傾向があるとも聞きます。
専門学校はコースごとにしっかりとカリキュラムが組んであるので、最小限の期間で必要な知識を身につけることができるというメリットがあります。
より短期間で知識を身につけて社会に出たいと思うなら、向上心を持って専門学校を検討してみると良いでしょう。
気になる学校の文化祭やオープンカレッジに積極的に参加して、普段の授業の様子を見学してみて下さい。
卒業後の違い
卒業後の大きな違いとしては、大学なら最終学歴が「大学」になるので大卒となります。専門学校(専修学校)なら専門卒(専門士)になるというところもあります。
専門学校を選んだ場合、もし将来の就職で大学卒以上の学士が必要になった場合は、希望の会社に入れないこともあります。
ファッションデザイナーとして活躍するようになれば関係ない話にはなりますが、現代の日本では大学卒の方が給料が高い場合もまだまだあります。
ちなみに専門学校を卒業して専門士の称号を得た人が将来的に大学に編入する場合、大学3年次(または2年次)に編入できます。
それでも1度社会に出てから大学で学びなおすことは簡単なことではありません。
学歴があって邪魔になることは決してありませんので、大学に行ける環境であればまずは大学を検討してみるという方法もあります。
学校への通いやすさや費用の問題もあるかと思います。
ご家族や在学している学校の先生にしっかりと自分の希望を伝えて、どのような学校が自分にあっていると思うか意見を聞いて考えをまとめてみて下さい。
若手デザイナー・高校生が参加できるコンテスト
最後に、ファッションデザイナーを目指す若い人や高校生が参加できるコンテストを3つご紹介します。
装苑賞
1936年創刊のファッション雑誌「装苑」が主催するコンテストで、新人ファッションデザイナーを対象としています。
2022年で96回を迎え、次の豪華8名が審査員を務めました。
コシノジュンコ(JUNKO KOSHINO)
津森千里(TSUMORI CHISATO)
皆川明(minä perhonen)
廣川玉枝(SOMARTA)
髙島一精(Kazuaki Takashima)
三原康裕(MIHARAYASUHIRO)
森永邦彦(ANREALAGE)
熊切秀典(beautiful people)
過去に装苑賞の栄誉に輝いたデザイナーにはコシノジュンコ、山本寛斎、山本耀司などがいます。
装苑賞
ファッション甲子園
全国高等学校ファッションデザイン選手権(通称ファッション甲子園)は、全国の高校生を対象にしているファッションコンテストです。
縫製工場が多く集まる青森県弘前市と市の商工会議所、地元のアパレル産業団体が主催しています。
高校生とそれに準じる専門学校の生徒を対象にしていて、2000年から開催されています。
全国高等学校ファッションデザイン選手権(ファッション甲子園)
全国ファッションコンテスト
1926年創立の服飾系学校 杉野学園が主催するコンテストです。
杉野学園は日本で初めてファッションショーを主催したことでも知られている学校で、2022年でコンテストは59回を迎えました。
対象者はまだコレクションを発表していない一般人と学生で、高校生向けのファッション画(デザイン画)コンテストも開催しています。
全国ファッションデザインコンテスト