今、注目される日本のデザイナーXXVII~浅川 喜一朗(あさかわ きいちろう)~

セレクトショップスタッフから、自分の表現を求めてデザイナーへ


浅川喜一朗氏 参照:https://kld-c.jp/blog/stein-designer/#i-5

浅川喜一朗氏は、1986年山梨県の生まれです。小さい頃から洋服が好きで、大学卒業後には半年ほど会社勤めをした後、すぐに原宿にあるセレクトショップ店員に転職をしています。若い頃から特に古着が好きで、大量の古着を購入するため借金をしたこともあるといいます。古着から発展した服への思いは、自分のセレクトショップを持つことにつながり、そして、自分の思い描いたデザインの洋服を制作することへと発展します。今回は、2017年のビジュアル発表以来、ファッションに敏感な人々から注目を浴びる、「シュタイン」のデザイナー、浅川喜一朗氏をご紹介します。

服好きの若者が人気セレクトショップの店員に

小学生の頃から洋服が好きだった浅川氏。お気に入りのスニーカーを集めたり、両親と買い物に行っても、自分で洋服を選んだりしていたそうです。そして、中学生になってからは東京にも買い物へ行くようになり、そこで古着と出会いました。
大学へ進学しても、洋服のへの情熱は冷めることがなく、一度は一般企業に就職をしますが、半年後には原宿にあった大人気セレクトショップ「ナイチチ」のスタッフへと転身することになります。
浅川氏はナイチチでの経験を、こう語っています。「ファッションはプロダクトも大事だけれど、その世界観や空気、カルチャーも大切だということを学ばせていただきました」。そして、この、学びが自身のベースになっているとも述べています。

自分のショップを持ち、ブランドを立ち上げ


参照:https://kld-c.jp/blog/stein-designer/#i-5

浅川氏にとって、多くの学びや経験を得たナイチチですが、2016年の1月に閉店をしています。これを期に独立を決意した浅川氏は、同じく原宿の地に「carol(キャロル)」というショップをオープンします。ナイチチの閉店からわずか3ヶ月後、4月のことです。
準備期間が短かったため、アイテムはリーバイスの古着など、種類は少なかったのですが、ナイチチの顧客で盛況なスタートを切ることになります。そこで、浅川氏が独自のサービスとして始めたのが、ジーンズのカスタムでした。顧客のサイズに合わせて、古着のジーンズを解体して再縫製するというものです。もちろん、手間はかかりますが、同時にとてもやりがいがを感じていたといいます。
そして、そのやりがいこそが、後のブランド立ち上げにつながっていくのです。

「ニュー・オーダー」がブランドコンセプト


参照:https://www.mensnonno.jp/post/164450/#shm-vp-6

ショップでのジーンズカスタマイズを続けるうち、浅川氏の頭には次第にブランドの構想が生まれます。この時から「パターンも感覚的な部分ではわかっていたので、デニムをリメイクしているうちに『つくれれるかもしれない』と思うようになって、パンツ3型からシュタインをスタートしました」と語るように、ブランドのベースがスタートしたのです。

「はざま」を表現するブランド

ブランド名のシュタインは、浅川氏の思いが詰まった名称です。その意味については、次のように語っています。「シュタインはドイツ語で、アインシュタイン、ヴィトゲンシュタインのようにフロントに何か言葉がつくことで、特定の一族の名前になる単語です。一見普通だけど、何かと結びつくことで特別なものになる。同じように僕がつくる服が、手に取ってくださった方に寄り添いつつ、着てもらうことで特別な一着になっていく。そんな思いを込めました」。
また、ブランドコンセプトについては、「無から有へ。そのはざまの部分を表現する」というワードを掲げます。そして、「古着もモードも好きだけれど、その間の部分に自分の好きなものがあったりします。洋服はもちろんビジュアルの写真なども含めて、そういう『はざま』が自分がいちばん表現していきたい部分であり、シュタインの方向性です」と、その主旨を説明しています。

ジェンダーレスな展開が現代のトレンドにマッチ


参照:https://www.mensnonno.jp/post/164450/#shm-vp-6

浅川氏がデザインするシュタインの特徴といえば、やはりジェンダーレス。「はざま」を表現するためには、メンズ、ウィメンズの境を取り払った発想が重要になってくるのかもしれません。
コレクションをつくるとき、最初はテーマを決めていたということですが、現在では自由な発想を大切にしているとのこと。「スタートの時点ではテーマを決めず、つくっていく過程で自分が気になるところや、そのときの気分など内面的な部分を追求してコレクションを完成させています」と、語るようにフレキシブルな感覚が織りなす造形が、シュタインの魅力なのかもしれません。
浅川氏が率いるシュタインは、大手アパレルに所属をしているわけでもなく、大きな賞を獲得しているわけでもありません。そういう意味では、今までご紹介してきたブランドとは少しカラーが違うかもしれません。しかし、その支持層は、さざ波のように静かに広がりつつある、注目のブランドであることは確かです。