「古着がファッションの入り口だった」注目の若手デザイナー
後藤愼平氏 参照:https://www.wwdjapan.com/articles/1177985
後藤愼平氏は、1992年生まれ、愛知県出身のファッションデザイナーです。高校卒業後に文化服装学院に進学、卒業後はヴィンテージショップを経て、25歳でOEMやブランド事業を行うアパレル企業「ソウキ(SOHIKI)」が運営するメンズブランド「M A S U(エムエーエスユー)」のデザイナーに就任しました。今回は、高いクオリティと一貫性のあるデザインで若手デザイナーの中でも抜群の注目を集める、後藤氏にスポットを当てていきたいと思います。
すべては、古着から始まった
後藤氏がファッションに興味を持ったきっかけは、中学生の時に出会った、古着のリーバイス501だったと言います。そこから70年代のファッションに魅了されていき、着ることからつくることへ興味がシフトしたのです。
高校を卒業後はファッションデザイナーを志して、文化服装学院へ進学。そして、在学中のアルバイトも、古着を扱うヴィンテージショップ「ライラ(LAILA)」というショップでした。
ライラでは、リメイクやお直し担当として1年間働き、卒業後はそのままライラに入社して、21歳で同社のオリジナルブランド「セブン バイ セブン(SEVEN BY SEVEN)」の立ち上げに参加。企画や生産管理を4年間務めるなど、後藤氏にとって貴重な経験を積んだ場所となりました。
実はこのライラは、「North Beach Leather(ノース・ビーチ・レザー)とかEast West Leather(イースト・ウェスト・レザー)とかが好きになって調べてたら、ライラに辿り着いたんですよね」と後藤氏が言うように、高校時代から憧れていたショップ。古着という縁が彼の人生に大きく影響を与えたのです。
25歳の若さで既存ブランドをリブランディング
参照:https://www.fashion-press.net/collections/gallery/84735/1446114
後藤氏が25歳のとき、ライラを辞めるタイミングで、以前から知り合いだったという方に誘われ、既存のブランドをリブランディングする形で現在の「M A S U(エムエーエスユー)」デザイナーに就任します。
ブランドの名称は、意外にも日本語から来ているとのこと。「MASUっていうのが、『ありがとうございます』とかの丁寧語の『ます』からきていて。まず一つは丁寧な物作りであるっていうこと。それから、もう一つは尊敬語とか丁寧語とか、日常的に当たり前に使っているけど、あまり意識ってしないじゃないですか。そういうのを一度振り返ってみて、ちゃんと評価しましょうといことです」
このブランドコンセプトのとおり、後藤氏のつくる服は、丁寧で高いクオリティが特徴の一つとなっています。それは、大規模な縫製事業をおこなっている「SOKI」がブランド母体になっていることも深く関係していると言われています。
メンズブランドが提案する「新しい男性像」
参照:https://www.fashion-press.net/collections/gallery/84735/1446123
メンズブランドである「M A S U」を率いる後藤氏。その根底には、「新しい男性像」という考え方があると言います。その考え方は、トレンドに媚びず、高いクオリティを保ちながら、独自の個性を貫くブランドの姿勢につながっているのです。
固定観念を崩す新しい感性でつくるモード
参照:https://www.fashion-press.net/collections/gallery/84735/1446122
「『男だから泣くな』『男だから闘え』のような『男性だったらこうあるべきだ』という固定観念や風潮が昔から苦手でした。男性も繊細な感情や弱い部分、細やかさ、優しさを持っています。そういった小さな幸せに気付けるような感性は素敵ですし、人生が豊かになる。だから、その視点を洋服で伝えたいです」と語る後藤氏。メンズブランドだからこそ、「新しい男性像」を提唱し、その新しい感性から生まれるモードがあります。後藤氏は積極的にそのコンセプトを伝えていこうとしているのです。
また、新しい感性は遊び心にも溢れています。それは、ヴィンテージ特有の「ポケットの裏に何かが書いてあったり、ほこりやごみに混じってメモが入っていたりすることに気付くこと」さえ、一種の感性だと考えること。そのため、「M A S Uのアイテムで、ウエストの裏地に無数のクローバーの刺しゅうをあしらったテープが付くパンツがあるんですが、その中にランダムで四葉のクローバーを入れており、気付いた人だけが楽しめるポイントになっています」という、面白い仕掛けも用意されています。
他ブランドにはない強みで、海外展開も視野に
M A S Uが持つ、他ブランドにはない大きな強みが、生産性です。縫製事業を行う「SOHKI」がバックアップすることで、大規模な縫製工場や生地の調達など、コスト面で大きなアドバンテージがあるのです。
このことが、高いクオリティを維持しながらも、若年層に訴求できる価格帯を実現している要因です。そして、この強みこそ、海外展開していく上では、さらに重要視されていくことでしょう。
現在はまだ、積極的に海外進出は考えていないという後藤氏ですが、今後は、海外バイヤーからの引き合いも多くなってくると考えられます。憧れだという山本耀司氏のように、世界に羽ばたいていく時も、ごく近い将来に実現することでしょう。