新作コレクションの発表へ向けて大詰め!
「ファッションデザイナーの仕事ってどんなもの?(2)」では、生地など素材選定の作業から、デザイン画(ファッション画)が描かれるまでを解説していきました。
そしてこの記事では、製作大詰めの、新作コレクション発表の前の段階の「デザイナーの仕事」を解説したいと思います!
ファッションショーと展示会での発表へ向けて、デザイナーさんはいったいどのような仕事をしているのでしょうか?詳しく調べていきたいと思います!
ファッションデザイナーの相棒「パタンナー」が登場
ファッションデザイナーは、手掛けたデザイン画が完成したら、そのデザイン画を実際に洋服に仕立てるための「型紙」製作をパタンナーに依頼します。
この「型紙」(型紙=パターン)を作る仕事をする人のことを日本のアパレル業界では「パタンナー」と呼びます。(英語圏では「Pattern maker」と呼ぶようです。)
洋服のデザイン画をイメージ通りに実際に服に仕立てることができるかどうかは、パタンナーさんの腕前にかかっています。
パターン作成は、平面の紙に描いて作りますが、型紙を縫い合わせて仕立てた時に立体の美しい洋服になるよう計算しながら描いていく、という専門的な技術です。
具体的な型紙の起こし方は、鉛筆やシャープペンなどの筆記具、カーブ定規(曲線をとるための定規)やメジャーを駆使し、紙の上にひとつひとつ型紙を描き上げていくという地道な作業です。
ファッションデザイナーはパタンナーさんに意図するデザインを伝え、パタンナーさんはデザイナーがイメージしている細部のニュアンスまでくみ取って、洋服デザインを的確に型紙化していかなければならないのです。
つまりパタンナーさんは、デザイナーの「相棒」と言っても良いくらいの重要なポジションだと言えるのです。
デザイナーとパタンナーは、打ち合わせを行いながら仮の型紙で裁断した布をまち針で留める、もしくは仮縫いして、トルソーに着せ付けて洋服デザインの修正を加えていく作業(※これをトワルチェックと言います)をくり返し、展示会/ファッショショーで発表するためのサンプル製作を行います。
そして縫製担当者が、1枚1枚を縫い上げ、ファッションショ-本番に向けて新作サンプルの洋服を完成形に仕立てていきます。
そしてファッションショーへ!
新作コレクションのサンプルづくりが終盤に近付くなか、いよいよファッションショー本番への準備も本格化していきます!
デザイナーの季節ごとの新作コレクションが発表されるファッションショーは、世界の都市で開催されています。
なかでも世界一有名なのは、やはりフランスで行われる「パリコレクション」でしょうか。みなさん「パリコレ」のことは、一度は耳にしたことがあるのでは?!
日本国内では、「東京コレクション」(メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク東京)が最も大きなファッションショーだそうです。
一年に2回、春夏ものと秋冬ものに分かれて開催されています。
このファッションショーでは、デザイナーの考えた新作コレクションのテーマに合わせて、デザイナーと専門家たちが舞台演出を考えていくことになります。
ファッションショー演出家・音楽構成を考える音楽担当者・照明技術者・ファッションモデル、ヘアメイクアップアーティスト、衣装スタッフなど、ファッションショーに関わるその道のプロと力を合わせて、どんなファッションショーにしていくのか、詰めの準備を行います。
ファッションショー本番は、1人のデザイナーが手掛ける1ブランドにつき、20分から30分の時間配分です。
この時間内に45着~50着もの新作を発表していくのだそうです。ちなみに、洋服だけではなくてバッグや靴やアクセサリーも、モデルが新作を身に着けて同時に発表します。
ショーの本番当日は、1~3時間前にデザイナー本人も会場入り。デザイナーは演出スタッフと打ち合わせをしたり、モデルのヘアメイクを確認したり、用意した新作の洋服が問題なく出番を迎えるように、靴やバッグなどと揃えたり、リハーサルをチェックしたり…と、忙しく本番まえの舞台裏で立ち働きます。
すべて滞りなく準備ができたら、いよいよショー本番です!
約20~30分間の開催時間は、おそらく洋服を手掛けたデザイナーさんにとって、ここまででもっともドキドキする時間ではないでしょうか?
オーディションを開いて集めた、洋服にピッタリの美しいファッションモデルたちが新作の服をまとい、照明に照らされたランウェイ(舞台)を音楽に合わせてさっそうと闊歩していきます。
会場の客席の雰囲気で、新作の洋服発表に対する世の中のリアクションもだいたいわかってしまいますよね。リアクションが良いものであれ、イマイチであれ、デザイナーさんにとってはここまでの製作期間の大切な成果となります。
新作の45~50着を発表し終えたら、ラストはデザイナーさん本人がランウェイに登場して、あいさつや短いスピーチをすることも!
そしてショー終了後は、デザイナーはメディアに取材を受け、今回の新作コレクションについて報道陣に語ります。
長かったファッションショーまでの道のりが、ようやく完結しました。
展示会ではビジネスとしてバイヤーと取引する
さて、ファッションショーのほかに、新作コレクション発表の場はもう一つあります。それは「展示会」です!
ファッションショーは、デザイナーの手掛けるブランドのイメージを世の中に宣伝するプロモーションの意味合いが強く、実際に商談まで行われることはありません。
しかし展示会では違います。
デパートやショップといった小売業のバイヤー(仕入れ担当者)が招かれて、ファッションブランド側と商談をして売買契約を結ぶところまで行うのです。
デザイナーが手掛けた服が、たくさんのお店に流通していくための大切な商談です。
ファッションブランドのデザイナー本人が、商談に参加して取引をすることになります。
そして展示会ではバイヤーからさまざまな意見を聞くことができるので、ファッションデザイナーはそれを聞いて、新作の洋服デザインを修正していきます。
ファッションショー用や展示会用のサンプルの洋服では無く、実際に店で販売する商品の服としてさらに良いものにするため、パタンナーと一緒にデザインを調整していく作業が必要なのです。
「オシャレな服の立役者」デザイナーってやっぱりスゴイ!
こうして考えてみると、「ファッションデザイナー」とは、本当にマルチな才覚が必要な仕事です。
服への情熱と傑出したデザインセンスはもちろんのこと、そのデザインした服が実際に店に流通したら売れるかどうかまで考えて製作し、商談でバイヤーと交渉・取引まで行う…。
もうお分かりいただけたと思いますが、小さな子供がお絵描きをするように、自由に発想を広げて好きなように洋服のデザイン画(ファッション画)を描く…決してそれだけがデザイナーの仕事ではないのです。
こうしてファッションショーも展示会もすべて終わったら、販売に必要な量が把握できるので、縫製工場に大量生産を依頼します。
全国のデパートやショップに流通する分量の洋服を工場で生産してもらったら、ついにそれぞれの小売店に、デザイナーがデザインした洋服が並べられていくことになります!
そしてようやく新作コレクションの洋服が、店を通じて欲しいひとの手もとへと販売されます。
買った人の人生を豊かにするような、心ときめくような素敵な服を手掛けるファッションデザイナー。
「オシャレな服の立役者」の毎日の仕事は、やはり一筋縄ではいかない大変な仕事なのです!
アパレル業界の第一線で働くファッションデザイナーさんって、信じられないほどエネルギッシュな人でないと、とてもつとまらないのでは、と思ってしまいます…!!?
デザイナーのお仕事の真実、どうでしたか?
「ファッションデザイナーの仕事って、イメージしていたよりすごく面白そうだった!」
「デザイナーさんって考えていたより、いろいろな仕事があってちょっと大変かも!?」
この記事を読んで、そんなふうに思っていただけたら、筆者はとてもうれしいです!
イメージしていたよりも、意外に○○だった…そんな感想もぜひお聞かせください。
ファッションデザイナーは、ずばり、素敵な職業です。世の中の人が心ときめかせるような洋服を自分がデザインする、なんて、一握りの才能ある人しかできない、刺激的で楽しい職業といえるのではないでしょうか。
ここまでデザイナーの毎日の仕事について資料にあたりながら調べてきましたが、「ファッションデザイナー」とは、魅力あふれる職業である、ということは間違いないのです。
「まだ世の中にない、素晴らしい服を作ってやる!」と考えるファッションデザイナーさん、未来のファッションを切り拓くデザイナーさんの卵が、これからさらに日本のファッション文化を豊かにオシャレにしてくれるのを、筆者も楽しみにしています!