4月5日から4月18日にかけて、銀座(エストネーションセントラル)にて行われた服飾販売・展示会「THAT’S FASHION WEEKEND SPRING EXHIBITION 2022」。そのイベントレポートと、そもそも何でサスティナブルなファッションなの? という根本的な問いから、様々な企業のお話まで、全3回に分けてお伝えします。
事の始まりと経緯、そして展示の様子
2021年10月に、渋谷ヒカリエホールにて「人気ブランドが集まる合同ファミリーセール」が開催されました。それがこの「THAT’S FASHION WEEKEND」のはじまり。SHIPSやnano UNIVERSE、MOUSSYなど著名なブランドが、抱えている在庫を破格の安さで提供したこのイベント。もともとは主催者代表の菅野さんが各ブランドとやり取りしていく中で見つけた、各ブランドの「在庫をなくしていきたい」という悩みを解決したいという想いからスタートしています。どのブランドも廃棄をなくしたい、サスティナブルな生産に切り替えたいという活動をしているのですが、それを応援するために菅野さんたちが立ち上がったというわけです。
(目の前に大きな看板。ここからTHAT’S FASHION WEEKENDは始まります。)
それが今回はパワーアップし、著名人の人気ブランドの合同ポップアップイベントに進化。小室安未さん(CamCamモデル)がディレクターを務めるcLa’mや、矢口真里さん(元『モーニング娘。』の3代目リーダー)がゲストデザイナーとしてプロデュースしたサイドゴアブーツを販売するPetit & Grandeなど、多数のブランドが集まっています。どれもとっても素敵でした。色合いやデザイン、ディテールにこだわりが感じられる商品が多く、実物を見られるという機会に恵まれるのもありがたいところです。
(矢口真里さんの着用写真。オシャレにディスプレイされていました。)
同時に、企画に協賛した各ブランドから提供された商品を、31校の大学から79名の学生たちがアップサイクルする、そして実際に販売するという大きなイベントも始動しました。若手育成をしつつ、日本のファッション界の未来を明るくして、国際的なファッション界に日本人デザイナーの力を届けたい、という願いを込めて開催されたこの企画。実際に会場にも展示され、リアルクローズ(※ファッションショーやコレクションで見られるような奇抜なデザインではなく、一般庶民でも金銭的に購買可能な価格帯にあるファッション性の高い既製服のこと)を意識して製作された力作が揃っています。とてもかわいらしい作品や、些細なアクセントにも気遣いが見られる作品など、私も着たい! オシャレ! と思える作品がたくさんありました。
(実際にアップサイクルされた商品たち。どれも素敵です。)
また、海外のミュージシャン・the weekendともコラボレーション。最新アルバムから公式テーマソングを決定し、会場で流すというところまでやっています。ヒップホップを聴いている人はこんな格好、パンクを聴いている人はこんな格好……みたいに、音楽とファッションは切っても切り離せない存在ですが、ファッションと様々なものをコラボレーションする企画を数多く手がけているのが菅野さんです。某お風呂グッズと服飾店のコラボレーションでは、店内にお風呂を模したディスプレイを設置し、コラボ商品も販売。今回の会場では「えんとつ街のプペル」とコラボレーションしたトートバッグが買えました。
今後は3都市(北九州、北海道、東京)でファミリーセールを開催、その後は5都市へ……他にも様々なジャンルとファッションをコラボレーションさせて……と、どんどん拡大していくこの「THAT’S FASHION WEEKEND」という取り組みから目が離せません。
(Weekendというアメリカの歌手です。今回の企画でタイアップ曲を歌っています。)
そもそもどうして今、サステナビリティを追求するのか?
現代において「サスティナブルな洋服」というのは必須のアイテムになっています。4月に法改正があり、プラスチックを削減する方向へ進んでいく日本でも、この考え方は徐々に浸透しています。環境への負荷が2番目に高いと言われる服飾産業では、素材選びやデザイン考案の時点で「どこまで環境への負担を減らすか」ということを考えています。廃棄処分される服を減らしたい、というのも、もとをたどれば「買ってもらったら長く使ってほしい」という企業の願いがあってこそ。そんな企業努力の他にも、世界的な古着の再評価やリペアすることの歓迎など、サスティナブルな洋服は持続可能な社会に変革していくために必要なものとして、若年層を中心に幅広い世代に受け入れられています。最終的には身の回りのすべての商品をサスティナブルな素材に変えていく、ということになるでしょう。そんな環境負荷の少ない未来のために、今できることをしていくのが我々に必要なことです。
(出典:環境省)
皆さんはどのくらい、自分の着ている洋服の生産背景を考えたことがありますか? 素材はどこで生産されたもの? 実際に縫製作業をしている人はどんな環境に置かれているのでしょうか? それらを透明にしていくのもまたひとつの社会的課題ですが、消費者である我々は安さだけに注目して、大事なものを見失っていませんか?
日本は全体的にこの「サスティナブルな洋服」づくりが遅れていると言われていますが、こんなに企業が努力しているのになぜなのでしょうか。
ファッション業界はすでにSDGsに向けて徐々に動いています。企業間に差はありますが、もうすぐ100%が循環可能な素材・販路になっていくと言われるブランドもあります。けれど、その商品を選んで買わないのは消費者です。安ければいい、という考え方をしてしまうのは、社会の構造としても問題ですが、我々は「ひとつのものを長く使う」「直して使う」「別の人に譲る」ということをあまりしていないのではないでしょうか。破れたら捨てる、汚くなったら捨てる。それは簡単なことだけれど、その背景にある課題をどのくらい考えているでしょうか。そこがあいまいなまま、企業だけが頑張っているのが現状です。まずは私たち消費者が意識を変えて、サスティナブルな洋服、エシカルファッションに転換すべきなのではないかと、私は考えています。
(可愛いアップサイクル商品。実際に購入できます。)
わたしたちがこれから考えなければならないこと
アップサイクルされたお洋服を見ていたとき、日本のデザイナーが今後世界でどれくらいの価値を持つか、ということをファッション産業全体で考えなければいけないな、と思わされました。素敵な洋服をデザインできる可能性を秘めた存在が、こんなにたくさんいる。しかし日本の経済やデザイナーの力は最盛期に比べ衰退しているのが、悲しいことに現代の現実です。若い世代はこんなにサスティナブルな洋服を選んでいるのに、大人はどのくらい考えているだろう、と思ってしまいました。サステナビリティの問題含め、それを解決するために必要なのは「今後どうなっていくかを見据えること」だと感じました。
大人が次の世代を担う若者たちのために、どこまで投資できるか。それは人材育成という側面だけでなく、サスティナブルな洋服があることを周知すること、サステナビリティを意識して行動すること……様々な可能性が考えられます。
これからの社会が先細りしないように、現実を見据えて、そのうえで出来る限りのサポートをしていくことが大事だと感じました。
取材を快諾してくださった菅野さんはじめ会場の皆様に感謝を。ありがとうございました。
(レポート:長島諒子)