ファッションデザイナーが登場するドラマを見ていると、ドレスやスーツのデザイン画を一心不乱に描いていたり、ファッションショーの最後にモデルと肩を組みながらランウェイに登場する華やかなシーンが多いように思います。
デザイナーというお仕事をわかりやすく表現しているのだと思いますが、本来のファッションデザイナーの仕事はもっともっと多岐にわたるやりがいのあるお仕事なんですよ。
ここでは、ファッションデザイナーの仕事の流れと役割を職業としての観点からご紹介していきます。
ファッションデザイナーの仕事とは?
皆さんが思い浮かべるファッションデザイナーは、自由に服の形や色をデザインして、頭の中にある素晴らしい洋服たちを思いつくままに色鮮やかな絵にしていくというイメージなのではないでしょうか。どちらかというと感性の世界を想像している人もいるでしょう。
しかし、デザイナーは感性や自己表現だけで成り立つ仕事ではありません。
パタンナーや業者さんとの協力も必要ですし、ターゲット層を絞って受け入れられやすいデザインを考案する、売りたい価格から素材を考えるなどコンセプトの決定も必要です。
自分のブランドを作るためにはマーケティングやセルフプロデュース能力も求められます。
これらの戦略をすべてひとりのデザイナーが行うわけではありませんが、各部門のエキスパートから受け取った情報で全体の舵をとるのはデザイナーの役目になるため、大まかな知識はあった方が良いということになります。
可能なかぎり制限を受けずに自分の感性や内側を表現するのがアーティストなら、ファッションデザイナーはある程度の制限の中で最高の結果を生み出すことが求められている職業と言えます。
ファッションデザインの工程
ファッションデザイナーがどのような工程を経て新しい洋服を生み出しているのか、具体的な流れを見ていきましょう。
★ファッションデザインの流れ
1.デザインを考える(デザイン画を描く)
2.デザイン画を元にパターンを製作する
3.仮縫い
4.サンプル作成のための書類の作成
5.展示会、ファッションショーを行う
1.デザインを考える(デザイン画を描く)
デザインを考えるときには感性だけで絵にするのではなく、コンセプト”誰がどのようなシーンで着用するのか?”を踏まえて考えていくことになります。
年齢、性別、トレンドを考慮して、作りたい洋服の形・色・柄・素材などを決めていくのです。
ご家庭の洋裁ではパターンつきの本から作りたい洋服を見つけて生地を購入するという人も多いかと思いますが、ファッションデザインの現場では「色」「素材」を最初に決定します。
そのイメージを生地メーカーに伝えて、在庫から選んだり新たな生地を作って使用する生地を決めるのです。
生地が決定したらその生地で作るイメージでデザイン画を描いていきます。
2.デザイン画を元にパターンを製作する
パターンは型紙のこと。平面のイラストを立体的な洋服に仕上げるために必要な型紙です。
デザイン画からパターンを起こすのはデザイナーではなくパタンナーのお仕事になります。
デザイナーはパタンナーにデザイン画を渡してパターンを作成してもらいます。
パターンは洋服の仕上がりにとても重要な役割を持ち、デザイナーのイメージを形にするためにも大切ですので、デザイナーが手伝ったり制作中に指示を出すこともあります。
3.仮縫い
パターンができたら仮の生地で実際に洋服の形を作っていきます。
デザイン画を元にしてパターンから生地を裁断して縫ってサンプルを作ります。この仮縫い作業もパタンナーが行います。
デザイナーは出来上がった洋服をチェックします。全体的なシルエット、襟、袖、ポケット、ファスナー、ボタン、装飾などあらゆる部分を細かくチェックして調整していくのです。
チェックが入った部分をパタンナーが直して再度デザイナーがチェックするという流れを繰り返して完成を目指します。
4.サンプル作成のための書類の作成
仮縫いを経て、パターンが完成したら次は生産のための工程に入ります。
デザイナーは使用する生地、装飾品、パーツなどを細かく決定します。
パタンナーは製法やプレスなど、この洋服を作るための指示をまとめた仕様書を作成します。
でき上がった仕様書はデザイン画、パターン、生地、パーツなどとまとめてサンプル工場に送られます。
工場では仕様書に基づいた実際の洋服をサンプルとして作成します。
5.ファッションショー、展示会を行う
いよいよファッションショーです!
ファションショーでは、サンプルがお披露目されることになります。
ショーの演出を考えるのもデザイナーのお仕事です。モデルや会場も考えなければいけません。
企画担当、演出担当などと相談をしながら、予算はどれくらいなのか、どのようなショーを目指すのかなどあらゆる項目を決定していきます。
展示会には小売業者のバイヤーなどを招待します。
実際に洋服のサンプルを見てもらって受注を受けるのです。
ここでバイヤーに細かい説明をするのは営業のお仕事になります。販売に結び付けるための注文をとってもらう大切な役割を担っています。
デザイナーにはコミュニケーション能力も欠かせません
デザイナーというお仕事には独創性や個人の能力も非常に重要です。
加えて、デザインを伝えるための技術も求められます。さらに実際の現場ではコミュニケーション能力も大切になります。自分のデザインを洋服にするためには情報を正確に伝えて、相手の能力も引き出す力も求められるでしょう。
また、近年はSNSを使ったマーケティング戦略が当たり前になっているので、プレゼンテーションもある程度自分で考えて、仲間と協力してひとつずつ実現していくことになります。
難しいけれどやりがいに溢れる仕事です!
ファッションデザイナーは国家資格が必須となる仕事ではありません。しかし専門知識とスキルがなければできない仕事です。
仕事をしていないときでも情報収集が必要で24時間いつでも仕事をしているような感覚になることもあるでしょう。
デザインと企画力という両方のスキルに加えて、チームをまとめる統率力やコミュニケーション能力も求められるため、成功するのは本当に一握りとなる世界です。
しかし、自分の内側から生まれた洋服が形になって世界に羽ばたいていく瞬間は何ものにも代えがたいものであることは間違いありません。
大変なことは多いですが、自分のブランドを確立して多くの人々をファッションで笑顔にしたり、自分が世界のトレンドを牽引すると考えるとゾクゾクしてくる仕事なのではないでしょうか?