「プラダ(PRADA)」と「ミュウミュウ(MIU MIU)」を展開するプラダグループが2020年春・夏ウィメンズコレクションより動物の毛皮を使用した衣類やファッションアイテムの製造を終了しています。
ここ数年、こういった「ファーフリー宣言」を行う高級ブランドが急ピッチで増えています。
例えば「ヴェルサーチェ(Versace)」「バーバリー(Burberry)」「グッチ(GUCCI)」「フルラ(FURLA)」「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」などの日本でおなじみのブランドが動物の毛皮の使用を取りやめてフェイクファー・エコファーに切り替えているのです。
2022年の初めには、「モンクレール(MONCLER)」も脱リアルファーを発表していて、リアルファーを使ったアイテムは2023年秋冬コレクションを最後にすることとしています。
今回は、このモンクレールのファーフリー宣言に注目してみましょう。
モンクレールの基本的なこと
モンクレールはフランス生まれのファッションブランドで、現在はイタリア ミラノを拠点に世界中で愛されています。
特に注目のアイテムはなんと言ってもダウンジャケット、ダウンコート、ダウンベストなどのダウンウェアでしょう。
元々モンクレールはタウニュースのファッションブランドではなく、アルピニストのためのウェア、シュラフ、テントなどを開発製造していたメーカーです。
その機能性の高さと美しさもあって、1968年開催のグルノーブルオリンピックではフランス・ナショナルチームの公式ウェアに採用されて、一般向けにパリのセレクトショップで取り扱いが始まったのは1980年以降と言われています。
最高品質のダウン・フェザーが使用されています
製造は現在も職人の手でひとつひとつ行われるため大量生産はできません。
ダウンウェアには最高品質のホワイトグース(ガチョウ)の産毛が使われています。
ダウンの選別には扇風機による風を用います。一定の風力をダウンに与えて、より遠くまで飛んだ軽い産毛だけを使用するのです。
ダウンの使用量はジャケットの部位によってグラム単位で決められているため、同じ体積あたりの密度は非常に高くなります。これがモンクレールのダウンジャケットが軽いのに保温性が優れている理由です。
品質の高さは国のお墨付きで、フランスの規格協会(AFNOR)から「4Flcorons(キャトル・フロコン)」に認定されていて、ダウンウェアのタグに表記があることを確認できます。
真冬でも暖かく過ごせるのはもちろんですが、もうひとつの魅力はその洗練されたデザインです。
ダウンジャケットなのに野暮ったい雰囲気にならず、ボディラインを美しく見せてくれるデザインで、質の高さにこだわる日本でも高い評価を得ています。
モンクレールといえば上質なダウン・フェザーなのでは?
モンクレールは2022年中にはファーの調達を停止して、2023年秋冬コレクションが最後のファー使用になるというサステナビリティブランも発表しています。
また、イタリア動物愛護団体LAVと長期的で建設的な関係を築いていくこととしていて、LAV側もモンクレールが動物の毛皮をコレクションから永久的に廃止するという決断を下したことを称賛しています。
ファンの方はモンクレールのファーフリー宣言に対して、決断は評価するけどダウン(羽毛)とフェザー(羽根)を使わなくなって今後発表する製品の品質は大丈夫?と心配になるかもしれません。
モンクレールのダウンウェアには保温性・通気性に優れていて、かつ軽量な高級グースのダウンフェザーが使用されているとお伝えしましたが、これが全て使えなくなってしまうのです。
しかし、世界の脱毛皮、アニマルフリーの動きはすでに加速していて、リアルファーの使用は古い考えという流れが始まっていて、環境への配慮や動物保護の動きは日本は大きく遅れているのです。
モンクレールの新しい挑戦はすでに始まっています
モンクレールが世界中で愛されてきた理由を知れば、今回のファーフリー宣言が世界を変えると言っても良いくらい大きな決断であることがわかりますよね。
ダウンウェアで地位を築いたとも言えるここまで大きなブランドが動物の毛皮の使用を段階的に廃止すると宣言したことには非常に大きな意味があります。
モンクレールではファーフリー宣言の他にも「BORN TO PROTECT」というサステナブル素材を利用したコレクションを2021年からはじめています。
第1弾ではダウンジャケットを発表し、第2弾ではリサイクルナイロン、ポリエステル、オーガニックコットンなどで製造したパーカー、バックパック、スニーカーなどがラインアップされています。
「カナダグース(Canada Goose)」もファーフリー宣言をしています
モンクレールと同じくダウンウェアの品質で世界中から信頼を得ているカナダグース(Canada Goose)も、2021年6月24日に公式Twitterで毛皮の使用を取りやめるファーフリー宣言を発表しています。
カナダグースで使用していた毛皮にはコヨーテのものがあり、一部の活動家から長年抗議を受けていたことも事実です。
2021年には毛皮を購入することを停止して、2022年内にはカナダグースブランドで毛皮使用製品の製造を停止することとしています。
「脱毛皮」は進んでいます
ダウンウェアで信頼を得てきたブランドがファーフリーを掲げるのは経営面から考えても非常に勇気が必要なことです。
こういった性質のある製品からリアルファーを取り除く方針を発表したということは、世界に緊急性の高い課題があるということではないでしょうか。
実際、2018年にはロンドンファッションウィークが毛皮を使用したファッションアイテムの使用を禁止することを発表しています。
The Guardian:London fashion week vows to be fur-free
アメリカ カリフォルニア州では、州内での動物の毛皮製品の製造と販売を禁止する法律が2019年10月に成立しています。
HUFFPOST:California Becomes First State To Ban The Sale Of Fur Products
2023年1月から発効されるもので、毛皮製品の禁止の観点としてアメリカの全州で初となる法律です。
※信仰の理由、中古品、ネイティブ・アメリカン民族の伝統的な部族や文化、スピリチュアルな観点による利用は除外され、レザーやシープスキンなどいくつかの例外を合法とするとしています。
脱毛皮=環境に優しい???
私たちは誰もファッション性の高さや機能性の高さを追求するために、動物を犠牲にすることを望んでいませんよね。
しかしファーフリー、アニマルフリーの実現とサステナブル社会にはまだまだ課題も多く、フェイクファーなどのリアルファー代替え品の製造プロセスで有害となる化学物質が使用されることもあります。
「脱毛皮=環境に優しい」と必ずしも直結することはありませんが、ファッション界を牽引する大手ブランドの模索に私たち消費者も高い関心を持ち、声を上げ続けることが求められています。
モンクレールファンの中には、リアルファーの品質が好きでダウンを購入していた人も多いことでしょう。しかしファッション業界の流れはそうも言っていられなくなってきています。
ダウンウェアの品質で世界から信頼を得てきたモンクレールやカナダグースが今後どう変わっていくのか注目していきましょう。