今、注目される日本のデザイナーXV~濱田 博昭(はまだ ひろあき)~

「Tokyo新人デザイナーファッション大賞都知事賞」を受賞した期待のデザイナー


濱田 博昭氏 参照:https://www.fashionsnap.com/article/2019-08-23/portverl-fashiongp-interview/

Tokyo新人デザイナーファッション大賞は、世界的なファッション都市である「東京」から世界へ向け発信をする目的で、1984年に設立された歴史ある賞です。現在では若手デザイナーの登竜門とも言われていて、プロ部門では海外進出へのサポートなども受けられます。今回ご紹介する濱田博昭氏は、2019年に同賞の最高位「都知事賞」を受賞、現在ファッション業界から多くの注目を集めているデザイナーです。

他のブランドがやらないことをやる

濱田氏は1984年鹿児島県の生まれ。学校などで洋服づくりを学んだことはなく、独学でノウハウを学び2015年には自らのブランドである「PORTVEL(ポートヴェール)」を立ち上げています。ブランド名の由来は「Portray(描写)+Novel(新しい)」。「旅」をテーマにしており、機能性・快適性にこだわる服づくりが共感を呼び、立ち上げ直後から人気ブランドとなります。
業界から注目を集めていた濱田氏が、Tokyo新人デザイナーファッション大賞を受賞したのは、ある意味必然だったのかもしれません。独学で服づくりを始めた青年がブランド立ち上げから4年で大きな賞を受賞するということは、その才能が広く認められた証左でしょう。
濱田氏がデザインを考える上で意識していることは、「他のブランドがやらないことをやる」というもの。映画やアニメなど、さまざまなカルチャーを自分のうちに取り込み、独自のアウトプットをすることが濱田氏のオリジナリティを支える源流であり、大きな支持を集める理由だと言えるでしょう。

受賞を機に大きく躍進


Tokyo新人デザイナーファッション大賞都知事賞受賞の様子 参照:http://www.fashion-gp.com/news/517/

Tokyo新人デザイナーファッション大賞の受賞後、濱田氏はブランド名を「NULABEL(ニューレーベル)」に変更して、本格的なビジネスの展開に乗り出します。
前述の通り、同賞を受賞したデザイナーには事務局がさまざまなサポートをおこなってくれますので、それを最大限に利用してビジネスに結びつけていったのです。もちろん、それにはデザイナーの実力が必要になるのですが、濱田氏には十分な力がありました。
受賞直後にはアシックスとのコラボレーションを果たし、パリでの展示会ではロンドン、ミラノ、パリなどのショップ、老舗百貨店などから多くの反応があったといいます。受賞をきっかけに国内外で大きく躍進を遂げようとしている濱田氏ですが、今後はどのようなビジネス展開を模索しているのでしょうか。次章ではその一部をご紹介していきます。

デジタルとサスティナブルなビジネス展開を実施


参照:https://the-nulabel.com/looks/fw21

濱田氏がTokyo新人デザイナーファッション大賞を受賞後、すぐに全世界を襲ったのが新型コロナ感染症でした。アパレル業界も多くの影響を受け、濱田氏自身もマーケットの変化についてさまざまな考えを持っているようです。その中心となるものが、デジタルの活用と、サステナビリティです。実際にどのようにそれらを取り入れているのかを見てみましょう。

機能性と快適性をコンセプトに生産管理をデジタル化

濱田氏のブランドであるニューレーベルのコンセプトは「機能性」と「快適性」です。そしてそれらを維持しつつ、「大手のスポーツメーカーなどでは出来ないような、インディペンデントなブランドだからこそ出来る型破りなクリエイションを意識」するような先進的なデザインのアイテムを打ち出しています。スポーティでアウトドアなウェアであり、アーバンウェアでもある、その2面性をつなぐものが「機能性」と「快適性」であるとも言えるでしょう。
ただ、そのデザイン工程は煩雑になりがちで、デザイナーやほかのスタッフもそこに集中させたいという思いがありました。そこで、
導入したのが生産ワークフローを一元管理できるクラウドサービスでした。これにより、生産工場との交渉も大幅に削減され、デザイン工程に集中できる様になったと言います。

サスティナブルな素材を使用した服づくりなど、時代に合わせたビジネスを


参照:https://the-nulabel.com/looks/ss21

濱田氏は、サステナビリティを意識した服づくりにも取り組んでいます。服の回収からリサイクル、再生素材を使った洋服の販売までを行うブランド「BRING™」とコラボレーションを実施して、ベーシックなTシャツを販売、多くの注目を集めています。
「しばらくマーケットは回復しない。そんな今こそ、ファッションビジネス全体が変化するべきだと思う」と濱田氏が語るように、新型コロナ感染症の影響は濃く、また、回復を遂げたとしても消費者は違う価値観でファッション業界を見るかもしれません。
濱田氏は、こうも語っています。「デジタルを活用してこれまでより多くの人とコミュニケーションをとるようにしているし、卸先のショップと一緒にインスタライブを行うなど新たな活動にも挑戦している。展示会や発信方法にもデジタル化を進めていくだろうし、ルックの表現なども変わっていくだろう」。変わりゆく時代に対して、どのように合わせ、そして創り出し、リードしてゆくのか、それがこれからの時代に活躍するデザイナーの大きな素養になるのかもしれません。