1990年代のファッションアイテム流行史

1990年代、ファッション業界では1980年代のデザイナーブランド志向から一転して、ストリート系やアメリカンカジュアルファッションが流行し始めます。
1990年代は独自のコーデが開花し、ファッションが多様化し始めた時代なのです。

お金をかけずおしゃれを楽しむ時代へ

1990年代は、「お金をかけずにおしゃれを楽しむ」ことがファッションのコンセプトとなりました。もちろん、シャネルやルイヴィトンなどのデザイナーブランドも変わらず人気がありましたが、1980年代のように極端なブランド志向ではなく、様々なファッションを自由に楽しむ時代へと変わっていったのが1990年代です。
1980年代のコンサバスタイルから、ストリートやカジュアルスタイルが主流になります。当時の若者たちの間では、Tシャツにデニムスタイルが定番となりました。
メンズ、レディースに関係なく、Tシャツやパーカー、ジーンズなどのダボッとしたゆる系のアイテムが流行しました。このゆる系ファッションの傾向は、海外の映画や音楽からの影響が大きいと言われています。
ダメージデニムや色落ちしたものなどが人気となり、古着がおしゃれ着として台頭してきたのも1990年代でした。

ギャルファッションの黄金期

1990年代前半は、バブル期の華やかさが残り、アメリカのロサンゼルスを見本としたリゾートカジュアルスタイルが「パラギャル」と呼ばれ、ギャルファッションの先駆けとなりました。また、パリジェンヌに憧れを抱く人たちの間では、フレンチカジュアルファッションが流行しました。

90年代後半には、空前のギャルブームが到来します。安室奈美恵さんの厚底ブーツにミニスカートファッションをマネする人「アムラー」が街中に溢れました。

1990年代に流行したファッション

ヒップホップファッション

出典元:https://minari-media.com/brands/70/

1990年代に流行したラップミュージックに乗せたブレークダンスやDJなどがファッションにも影響を与え、ヒップホップファッションが注目を浴びるようになります。ヒップホップファッションの特徴は、トレーナーやスポーツ用のジャージ、オーバーサイズのデニム、スニーカーがベースです。

スケーターファッション

出典元:https://www.houyhnhnm.jp/news/378925/

英字ロゴや大胆なイラストのデザインTシャツ、パーカー、ユーズド感のあるジーンズやハーフパンツに、足元は厚底のスニーカー、キャップといったスタイルが特徴です。

エスニックファッション

出典元:https://artsandculture.google.com/story/hQWBPmGdPtB7Iw?hl=ja

アジアやインド、アフリカなどの民族的なニュアンスを持つエスニックスタイルを取り入れたファッションが、再ヒットしたのも1990年代です。民族的なスタイルは1960年代から脚光を浴びていましたが、1990年代後半に流行がリバイバルしました。

1990年代の民族衣装的なファッションは、全身をエスニックスタイルで固めるのではなく、一部に取り入れた洗練されたスタイルに変化しました。

サーファーファッション

 

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1990年代以降のサーファーファッションでは、生地を裏返して仕立てたビンテージ感を出したアロハ柄のシャツが流行しました。

グランジファッション&ミニマリズム

出典元:https://arine.jp/articles/11481

グランジファッションは、1990年代前半に流行したグランジロックから派生したファッションです。着古して擦り切れたネルシャツやカーディガン、穴の開いたジーンズなどを着崩したり、長袖のTシャツに半そでのTシャツを合わせてレイヤードスタイルとして着こなすなど、個性的で独自のファッションです。

出典元:https://www.pen-online.jp/article/000850.html

一方、必要最小限を目指すといった意味を持つ、ミニマリズムがファッション界でも注目され、装飾的な要素を最小限にとどめた、シンプルでシャープなフォルムのデザインのミニマルデザインも人気がありました。
グランジファッションとミニマリズムファッションは、相反するファッションながら、共通するのは高級志向や消費社会を象徴するシステムへの疑問から生まれたファッションであることです。

その他にも、肩を露出したキャミソールやタンクトップ、ヘソ出しルック、チビTなども若者世代で流行しました。

キレイ目のフレンチカジュアルも人気

1990年代に、ストリートスタイルやカジュアルスタイルが流行する中で、キレイ目のファッションとして流行したのがフレンチカジュアルスタイルです。パリのライフスタイルに憧れを抱く人たちの間で流行った、上品なファッションです。
フレンチカジュアルの定番と言えば、ボーダー柄のトップスにデニムのスカートといったマリンコーデです。ごくシンプルなフレンチカジュアルスタイルが好まれるようになり、アニエス・ベーやA.P.Cなどのブランドが人気となりました。

ひと工夫であなたもパリジェンヌ風に変身できる!

1990年代のファッションは、ゆる系のアイテムが主流でしたが、そんな中で「トップスは短い方が自分に似合う」とか、「パンツはゆるめの方がカッコいい」などと、サイズ感やシルエットにこだわり、日本人にも似合うフレンチカジュアルスタイルの基礎が日本人によってできました。

アニエス・ベーについて

1984年に日本に上陸し、1990年代にフレンチカジュアルブームを巻き起こしたアニエス・ベーは、フランスのファッションデザイナーアニエス・トゥルーヴレによって創立されました。特に1990年代は「スナップカーディガン」が人気のアイテムで、フレンチカジュアルファッションにぴったりのシンプルなデザインが日本で人気を得ました。

他にも定番アイテムとしてロゴTシャツやボーダーシャツがありますが、キレイ目のシンプルなデザインが、2020年代も人気のブランドです。

パリっぽいカジュアルさとは?

モノトーンや、ボーダー、デニム、などのアイテムを気取らず品よく着こなしたスタイルがフレカジと呼ばれたフレンチカジュアルスタイルですが、人気のきっかけとなったのがジェーン・バーキンやジーン・セバーグなど、フランス映画界の女優たちのファッションでした。
ジェーン・バーキンといえば白シャツにデニムの装いに、カゴバッグを持ち、華奢なネックレスを重ね付けして、スニーカーを履いたシンプルなスタイルが定番でしたが、そのスタイルが1990年代の日本の女性に人気がありました。
また、ジーン・セバーグが1959年公開の「勝手にしやがれ」で彼女が着たボーダールックが、1990年代も大人気となりました。
ちなみに、1990年代に活躍したデザイナーは、森英恵・高田賢三・島田順子・鳥居ユキ・三宅一生・コシノ3姉妹・川久保玲・山本耀司・山本寛斎・阿部尋一・芦田淳・花井幸子・金子功・津森千里氏たちです。

ファッションの二極化によるファストファッションの台頭

1990年代に、ファッションの幅が大きく広がったことで、何を着るのも自由になりました。お金持ちの人も高級ブランドにこだわることなく、ストリートファッションを楽しむようになりました。
また、年齢に関係なく自分が似合うものや、着ていて心地よいものが主流となっていきました。そんな中で生まれたのが「早い、安い、おしゃれ」を売りにする、ファストファッションです。
1994年にユニクロのフリースが2,000円を切って誕生して以来、老若男女を問わず、2020年代も支持されています。安く手に入るファッションアイテムを着用することをプチプラファッションと言いますが、 ユニクロやしまむら、H&M、GAPなど低価格で買えるファストファッションがプチプラブランドの代表格です。
1959年代に呉服販売店として設立されたしまむらは、1990年代には物流システムを整え、「しまむらブランド」としての地位を確立しました。

転換期を迎えた1990年代

1990年代は、自分でファッションを考えて着こなすことが流行り、1980年代より飛躍的に多様性が増した時代です。「流行は、自分で作るもの」と考える若者が増え、コーディネート力が上がったのも1990年代です。
自分の価値観で自分らしいファッションスタイルを確立することができたことは、ファッション史から見ると大きな転換期とも言えます。