今、注目される日本のデザイナーXVIII~伊藤 壮一郎 (いとう そういちろう)~

独学で始めた服づくりが、東京発の人気ブランドへ


伊藤壮一郎氏 参照:rakutenfashionweektokyo.com/jp/topics/interview/soe/

伊藤壮一郎氏は1977年、東京都生まれのファッションデザイナーです。2001年に自らのブランド「ソーイ(SOE)」を設立、2004年からは東京コレクションに参加しています。ブランドのコンセプトは「装意・創意」で、ブランド名称もその語感を表現していると言われています。ブランドコンセプトにもあるように、伊藤氏のつくる服は個性的なものが多く、アメリカでもヨーロッパでもない「東京」を意識したデザインです。ブランド設立当初はメンズラインのみの展開でしたが2016年にはウィメンズも展開。日本を代表するブランドへと成長しています。今回は「東京」を世界に発信し続けるデザイナー、伊藤氏をご紹介していきます。

遊びの延長線上だったブランド立ち上げ

大学に進学するまでは、あまりファッションに興味を持っていなかったという伊藤氏。ただ、感性は人一倍強かったようです。その理由は育った環境に大きな要因があるかもしれません。なぜなら、伊藤氏の母親はアタッシェ・ド・プレスといって、有名アパレルメーカーの広報を勤めていた業界ではパイオニア的な存在だったからです。また、叔父は世界的な音楽家であるYMOの高橋幸宏氏という環境でしたから、実際に子供の頃から多彩なカルチャーや音楽を通してさまざまな影響を受けたといいます。
そして、さらに後のデザイナー人生に影響を与えたのが、高校卒業後3年間のロンドン留学でした。ファッションの勉強を意識はしなかったようですが、伊藤氏が手掛けるメンズウェアでは、テーラードスーツなど、影響が感じられるアイテムもあります。
ロンドン留学から帰国した伊藤氏は、青山学院大学へと進学、この大学生時代に運命を変える出会いがありました。偶然、ヨウジヤマモトのアシスタントをしている人物と知り合いになり、ブランドのアトリエに遊びに行くようになったのです。そこから今まで潜在していた、洋服への興味が大きく覚醒していきます。
母親の勧めもあり、「遊びの延長」という軽い気持ちで在学中に「ソーイ(SOE)」を立ち上げました。そして、「ブランドを始めた時代は、ドメスティックブランドに、注目が集まっていた時代で、運よく、その波に乗れただけ」と自分でも語るように、短期間で注目されるブランドとなっていったのです。

アメリカでもヨーロッパでもない、東京のファッション


参照:https://studious.co.jp/shop/soe/r/rsoem/

伊藤氏のデザインは、ジャンルにとらわれないことが特徴です。「例えば、“渋カジ”や“裏原”みたいにファッションってカテゴリー化されていますけど、僕がブランドを立ち上げたとき、カテゴリーに縛られることなくやっていきたいと思ったんです」と語るように、カテゴライズされない新しさを表現することで、「東京」というキーワードが浮かぶデザインとなっています。
日本を代表する、というよりも東京を代表する、といったほうがピッタリのデザイン。2015年にはパリコレにも進出を果たし、世界でも、東京テイストのモードを発表しています。

自身のブランドでは、デザイナーからディレクターへ転身


参照:https://www.fashion-press.net/collections/gallery/49738/858598

ブランドの設立から16年が経過した2018-19年秋冬コレクション。このコレクションをもって伊藤氏はメインデザイナーからディレクターへと転身しました。理由の一つとして若返りを目指したといいます。「どうしても若い感覚は必要になってくるし、時代において必要なことなのかな」と語る伊藤氏。今後のブランド展開はどのようなものになるのでしょうか。

ブランド設立16年目にして東京ファッションアワード受賞く

新たなデザイナーを立てたタイミングで、「ソーイ(SOE)」は、多くの有名デザイナーブランドが受賞している「東京ファッションアワード」へ参加し、見事受賞を果たしています。
この受賞によって、2012年以来の東京コレクションにも参加。また、海外展開へのサポートも受けられるため、今まで独自で行ってきた海外への展示会とは違う販路での、大規模な展示会に参加できるようになったといいます。
伊藤氏が、「アワードの応募は海外の販路とブランド認知拡大が主たる目的でした。やってみて新しいお客さんのきっかけは得られたかなと思います」と語るように、今後の海外展開への手応えは十分掴めたようです。

メンズとウィメンズの統合で新たな展開を目指す


参照:https://www.fashion-press.net/collections/gallery/49738/858599

そして、今後の展開に重要な、もう一つの変化が「soe WOMEN(ソーイ ウィメン)」を統合し、メンズ、ウィメンズともに「ソーイ(SOE)」で統一したことです。展示会のサイクルなどを効率化する狙いがあるそうですが、それぞれのデザインアイデアを相互に取り入れることができるメリットも大きかったようです。
特にウィメンズに関して、伊藤氏は次のように語っています。「デザインする上で僕は洋服が軽くなりすぎないように意識しています。そこが他のレディースとは違うのかもしれないです。あとは、ウィメンズに関してはトレンドをあまり意識しないようにしています。タグを外したらどこの服だか分からないブランドにはなりたくないじゃないですか」。トレンドに流されずに「東京」らしさを発信してゆく伊藤氏のスタイルは、今後も国内外で注目されることでしょう。