今、注目される日本のデザイナーXXXII~浜中 健太郎(はまなか けんたろう)~

ストリート系カルチャーから生まれたブランド


浜中健太郎氏 参照:https://qui.tokyo/feature/effecten-designer-interview-190418

浜中健太郎氏は、1982年北海道函館市の生まれです。文化服装学院でテキスタイルデザインを学び、2010年に自らのブランド「EFFECTEN(エフェクテン)」を立ち上げました。ストリートファッションをベースとしたルックが多くの若者に支持されており、ブランドと同時にオープンした原宿のセレクトショップ兼直営店の「ユーティリティ(utility)」を中心に、日本全国で商品展開しています。今回は、オリジナルな世界観に基づくデザインを次々と発表し続ける浜中氏の原点に迫ります。

デザインの根底に流れるカルチャーとは?

浜中氏のデザインには、多くのカルチャーが影響を与えています。ブランドのテーマは「「ANARCHY(アナーキー)・OUTSIDER(アウトサイダー)・JAZZ(ジャズ)・BLUES(ブルース)」。これらは、デザイナー浜中氏自身が少年時代から多くの影響を受けてきたカルチャーなのです。
「中三とか高校ぐらいのときに、すごいおしゃれな同級生が2人現れたんですよ。それどこで売ってるの?って一緒に服屋さんに連れていってもらったとき、Sex Pistolsのポスターを見て。衝撃を受けたんです。現代アート的な感じじゃないですか、色使いとかシルクスクリーンとか。それで、パンクのカルチャーにはまったんですよね」と語るように、浜中氏はパンクへの興味から、ロックやブルースなど、まず最初に音楽への興味があったようです。
ただ、ミュージシャンになりたいという願望はなかったといい、「そういう人たちに着てもらう服を作りたいと思っていました」と、音楽をきっかけに洋服への興味が深まっていったのです。

学生時代はコレクションよりシルクスクリーン製作に熱中


参照:https://www.utility-harajuku.jp/collection/

ファッションへの興味は日増しに大きくなり、高校卒業後は、日本におけるファッションデザイナーの登竜門、文化服装学院へと進学します。
浜中氏が専攻したのは「テキスタイルデザイン科」。ファッションデザインや服づくりだけを学ぶのではなく、染色や織り、プリントなど、素材のデザインを専門的に学ぶことを選んだのです。それは、ストリートファッションのベースである「プリント」が好き、という理由からでした。
「僕、コレクションがどうこうとかあまり興味なくて、それより家でシルクスクリーンの版を作って、お風呂場で刷って…みたいなストリートなやり方が好きだったんですよね」と語るように、学生の頃から個性派の片鱗が見受けられたようです。

カルチャーをベースにした服づくりを堅持


参照:https://www.utility-harajuku.jp/collection/

文化服装学院を卒業した浜中氏は、アパレルメーカーへと就職。商品規格やマネジメントなどを学びます。そして、2010年、仲間とともに、セレクトショップ「ユーティリティ(utility)」をオープン。それと同時に「EFFECTEN(エフェクテン)」を立ち上げることとなります。

仲間と共有できる空間が欲しかった


参照:https://www.utility-harajuku.jp/collection/

セレクトショップとブランドを同時に立ち上げた浜中氏。しかし、「僕は、ブランドが作りたかったというより、まず、この“空間”が欲しかったんです」と、言うように、まずは「ユーティリティ(utility)」という空間を確保することが優先だったようです。
それは、共に仕事をしてゆく仲間が集まれる場所をつくりたかった、という思いからです。
「大西という文化時代からの友人と、前職がいっしょだった吉田と3人ではじめたんですが、ほかにも皮の職人とか、ブーツ作ってる職人とか、マルチにデザインできる同級生とか、スタイリングができる後輩とか…そういういろんな人たちが、空間があれば集まるじゃないですか。勝手にみんながつながって仕事をしていく感じが面白いと思った」と語る浜中氏。共に働く仲間が集まり、そのコミュニティから、大きなパワーが生まれると実感している、とも言います。

表現方法は変えても、カルチャーをベースにすることは変えない

コミュニティから生まれる、大きなパワー。それを維持するのは「カルチャーをベースにすることは変えない」というポリシーです。浜中氏は次のように語っています。
「エフェクテンのコレクションは、毎シーズンがらっとテイストを変えるんです。だから、前シーズンは好きだったけど、今季は買うものがないってこともあるかもしれない。でも絶対譲れない部分はあって、それはカルチャーをベースにもの作りをするということ」。時代に合わせて変えてゆくこと、変えなければならないことは多くあります。ただ、根底にあるベースの部分は絶対に変えない、その頑固なまでの考え方が、ストリートファッションを愛する多くの若者に、支持されている理由なのかもしれません。