今、注目される日本のデザイナーXXXVI~原 まり奈(はら まりな)~

専門学校在学中にブランド設立、アイテムを「℃数」で表現する個性派


原まり奈氏 参照:https://qui.tokyo/feature/oldhoney-designer-interview-190516

原まり奈氏は、2013年のバンタンデザイン研究所在学中に、自らのブランドである「oldhoney(オールドハニー)」を⽴ち上げています。当初はスタイリスト科に所属していたのですが、特別進級クラス「X-SEED」に進学。リメイクブランドとして立ち上げた「oldhoney(オールドハニー)」はバンタンデザインの学内審査を経て、アジアの若手デザイナーを対象としたファッションブランドコンテスト「アジアンファッションコンテスト」に入賞、ニューヨークコレクションにも参加しています。今回は、学生の頃から大きく注目されていたデザイナー、原まり奈氏をご紹介します。

苦しくても夢を持てた専門学校時代

高校時代は、どのような職業に就きたいかなどの夢は無かったという原氏。変化が訪れたのは、バンタンデザイン研究所に入学したことがきっかけでした。当初はスタイリスト科に入学しましたが、デザインを学ぶために3年制のX-SEED科に編入。そこでは、周囲がデザインや技術が当たり前にできる生徒たちばかりで、遅れて編入した原氏は、非常に苦しい思いをしたといいます。
しかし、バンタンに入学してから目指し始めた、「自分の店、自分のブランドを持ちたい」という夢のために、寝る間も惜しみ勉強をつづけました。その結果、在学中にブランドを設立し、「アジアンファッションコンテスト」への入賞も果たせたのです。

商品名を「℃数」で表記


参照:https://www.oldhoney.tokyo/#&gid=1&pid=1

専門学校卒業後も順調にブランド運営を続ける原氏。ただ、不思議なことにオールドハニーでは、商品名(例えば、ロングスリーブTシャツなど)を℃数で表記しています。例としては、あるニット生地のブラウスは「41℃ tops」などです。
この珍しい表記方法は、デザイナーである原氏が発案したもの。「普通の商品名というのが、自分のなかでしっくりこなかった」と言うように、自分のデザインしたものに対してのこだわりから、始まったようです。そして、「温度」をで表現することについて、原氏は次のように語っています。
「当初ブランドコンセプトを“甘さが苦味にかわる瞬間の儚さを纏う”にしてたので、冷たいものが苦いとか暖かいものが甘いとか、温度が関わっていけるんじゃないかと思い、装飾度合いの高い低いを℃数で表現する方法をフッと思いついたんです」。原氏自身、よく聞かれる質問として、「商品名となる℃数の基準」があるといいます。その回答としては、自らの感覚で決めているとのことで、明確な基準は無いそうです。
少しわかりにくい面もある商品名ですが、原氏が「この℃数を使ってもっと面白いことをしたいのですが、現状手がまわっておらずもどかしい気持ちもあります」と語るように、今後はさらにユーザーを驚かせる展開が待っているかもしれません。

「特別な服」つくることを目標に

ファッションブランドは、時代に則した変化も必要となってきます。原氏のブランド、オールドハニーも現在のコンセプトは「⽇常に特別を添える服」、としています。もともと古着好きだった原氏は、今後どのようにオールドハニーを展開してこうとしているのでしょうか。

自ら意識している「特別感」


参照:https://seenowtokyo.com/brand/oldhoney/2022ss/look/9387

オールドハニーのデザイナーである原氏。しかし、普段の生活で自らのブランドを着ることは、あまりないと言います。「古着が好きっていうのももちろんあるんですけど、コンセプトにあるとおり、“特別な服”なんです。⾛ったりできないし、⽇常に着るには、ちょっとおしゃれ過ぎる。もちろんそれを調整することもできるんですけど、そうするとブランドらしくなくなってしまう」と、語るようにデザイナー自ら「特別感」を意識して服づくりを実践。多くの人に特別感を体験してもらいたいと考えているそうです。

ブランドの根底にあるのは、「ハンドメイドへのこだわり」


参照:https://seenowtokyo.com/brand/oldhoney/2022ss/look/9391

原氏が一番大切にしていること、それは「ハンドメイドへのこだわり」です。ブランドが大きくなるに連れて、やはりアウトソーシングに出すこともあるといいますが、アイテムの半分は自分で手を入れるものを残しているそうです。
「多いときは何百着も⼿縫いでやったりします(笑)。いつか、クチュールラインを作りたいとも思っているんです。オールドハニーの商品名は『60℃』とか『43℃』とか数字になっているんですが、それは装飾性や、特別度を数値化したもの。今まで最⾼『77℃』までいったかな」と、語るように、原氏の中で温度表示は、特別度と非常に近い感覚のようです。
「『100℃』なんて作れたらいいですよね、ウェディングドレスとか」と将来の夢を語る原氏。これからも「特別感」と「ハンドメイド」という、独自の感性を持ったデザインで、多くの人を魅了してくれることでしょう。