「プラダを着た悪魔」のファッションで身を飾ったアン・ハサウェイ

「プラダを着た悪魔」は、2006年に公開されたファッション界に革命を起こした作品です。上映から10年以上経った今でも、ファッション好きな方に役立つバイブル的な存在の映画です。
おしゃれのセンスが今ひとつで冴えないアン・ハサウェイ演じる主人公アンドレアが、一流ファッション誌の編集アシスタントとしてどんどん美しくなっていくストーリーは、「私も綺麗になれるかも」と希望と期待を与えてくれます。
この記事では、映画の中の主人公アンドレアのコーディネートを中心にお伝えします。

アン・ハサウェイが愛用したCHANEL

「プラダを着た悪魔」では、主人公のアンドレアがCHANEL(シャネル)をよく着ています。アンドレアの映画の中のファッションを振り返る前に、タイトルがプラダなのになぜシャネルを着ていたかについてお伝えします。
映画の中のアンドレアはCHANELをよく着ていますが、CHANELの創立者であるココ・シャネルの生い立ちや彼女のファッションに対する考え方を知ると、アンドレアのサクセスストーリーにCHANELが必要だったかが分かるでしょう。

CHANELを作ったココ・シャネルの生い立ちとは?

出典元:https://www.chanel.com/jp/about-chanel/the-history/1910/

ココ・シャネルは孤児として育ち、1910年に小さな帽子店からモード(MODE、フランス語でファッションや流行の意味)の世界へ入りました。当時、モードの世界は富裕層の貴婦人のためのものでした。
デザイナーにも富裕層が多く、高級な生地にレースやフリルのついたロング丈の長いドレスがモードの主流でした。
そんな時代に、モードの変革の一端を担ったのがココ・シャネルでした。
ココ・シャネルは、若い世代や中下層の女性にもモードなファッションを楽しんでほしいとの思いから、リトルブラックドレスを発表しました。良い生地は使ったものの、レースやフリルを省いて丈の短いコンパクトなデザインにしたため、コストがそれほどかからなかったのが人気の理由だとされています。
ココ・シャネルが発表したファッションスタイルは、女性の社会進出が始まろうかという時代にもマッチしており、シンプルなリトルブラックドレスは世界中に広がりました。この現象は「モードの民主化」とも「ファッション革命」とも言われています。
多くの人に手の届きやすい価格で楽しんでもらえるようにと考えた結果が、リトルブラックドレスの誕生の源となったようです。

また、アンドレアはシャネルのコスチュームジュエリーを「プラダを着た悪魔」の中で何回も身につけていますが、イミテーションのパールなども用いています。このように「本物にこだわらなくてもいいんだ」と映画のファッションが教えてくれます。
この映画のファッションに、シャネルの洋服やアクセサリーを登用した目的は、階級社会の崩壊と女性の社会進出といった基盤があるように思えます。

「プラダを着た悪魔」のスタイリングチエック

「プラダを着た悪魔」では、アン・ハサウェイ演じるアンドレアが様々なファッションを着こなしています。どんなものがあるのか見ていきましょう。

出典元:https://front-row.jp/_ct/17433507

この映画では、アンドレアのあまりにもダサすぎて同僚にもバカにされるほどのファッションセンスから、羨望のまなざしで見られる洗練されたファッションへと変身していく過程が楽しめます。
アンドレアの変身は、CHANEL(シャネル)からはじまります。
ファッション誌で働くために、ファッション・ディレクターであるナイジェルの手により大変身するアンディが最初に選んだのがCHANELでした。
この映画には、タイトルにもなったプラダをはじめ、マーク・ジェイコブス、ジミー・チュウ、カルバン・クライン、ケイト・スペードなどの人気ブランドが多数登場します
ファッションに関心がなく、野暮な服装のアンドレアは、ファッションの魅力に気づき、業界に詳しくなると同時に、ブランド物を身につけるなど彼女自身の日々の装いが大きく変化していきます。
衣装は「セックス・アンド・ザ・シティ」などでも知られる、パトリシア・フィールドが担当していて、今でも真似したいコーディネートがたくさんあります。
映画に登場するアンドレア・サックスのファッションを順を追って、ご紹介するとともに、現在にも参考にしたいファッションのヒントをお伝えします。

・CHANEL(シャネル)のジャケットとブーツ

出典元:https://item.fril.jp/1f03dfa951eaf8c60299b825ff0a2d6c

ファッション誌で働くために一念発起したアンドレアは、ファッションディレクターであるナイジェルの手により大変身します。CHANELのジャケットとブーツに合わせたマイクロミニスカートはクリスティーナティのものでした。
昨年くらいからミニスカート姿を街でも見かけるようになりましたが、2022年のパリコレ春夏コレクションでもマイクロミニスカートが登場しています。

・CHANEL(シャネル)の白いアウター

出典元:https://mine-3m.com/articles/16851

白いアウターのボタンを全て閉めてワンピース風に着こなし、やはり同じシャネルの帽子は白になじみの良いツイード柄を用いています。全体が品よくまとまっていますが、メタリックバッグをチョイスすることで若さが強調されています。
センスのよさは、「完璧にまとめる」だけでは、どこか物足りなさがあるものです。白いアウターに同系色の帽子やバッグを合わせると、上品さはあっても、インパクトに欠けます。
映画の中のファッションから私たちが盗みたいのは「意外性のあるコーデから生まれる新鮮なファッション」です。

・鮮やかなグリーンのアウター
鮮やかなグリーンのアウターの襟元と袖にアニマル柄のポイントは、インパクトがあります。このファッションにゴールドのパンプスを合わせられるのは、ニューヨークだからかもしれません。ファッション業界の人はともかく、普通のOLや主婦にはおしゃれ過ぎて、敷居が高いコーディネートです。しかし、自信をもってチャレンジすることも大事です。

・ウエストマークのシックなカーキドレス
カーキ色は、ここ数年流行っていますが、シックなカーキドレスは派手過ぎず地味過ぎず、ほとんどの人に似合う色です。この映画ではCalvin Klein(カルバン クライン)のウエストマークしたベルトがポイントですが、真似しやすいく、日常の装いにも取り入れやすいファッションです。

・シックなブラックドレスには小物とメイクで華やかに
若いアンドレアは、ブラックドレスにレッドルージュを添えるだけで華やかさが演出できますが、年齢を重ねると暗めの印象を与えてしまいます。
そこでプラスしたいのが、顔まわりにオレンジ色などの明るい色の小物を持ってくることです。この映画の中でも、アンドレアがブラックのアウターにビビットなオレンジの帽子を合わせていますが、何ともチャーミングです。

・こなれ感が演出できるシャツとオフショルダーのレイヤード
映画中に登場する、ミュウミュウのシャツにオフショルダーのトップスをレイヤードしたカジュアルなコーディネートは、すぐにでも模倣できそうです。

・柄ON柄をどう着るか?
色味を統一させることでまとまった感じがしますが、柄物と柄物を組み合わせるは、かなり上級者のコーディネートと言えるでしょう。
映画の中では、LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)のチェックジャケットにMoschino(モスキーノ)のストライプスカートを合わせた柄ON柄スタイルですが、ブラウンで統一されているため違和感がなく、おしゃれな印象を与えます。

・品のいいカジュアル
ラストシーンは、ジャケットはVINCE.(ヴィンス)、タートルネックニットはDKNY(ダナ キャラン ニューヨーク)、ブーツはCalvin Klein(カルバン クライン)で品のいい洗練されたカジュアルファッションが魅力的です。

メリル・ストリープ演じるミランダ・プリーストリーのファッションに学ぶ

「プラダを着た悪魔」とも言われる冷徹なランウェイ編集長ミランダ・プリーストリーの登場場面で持っていたグレーのプラダバッグが印象的です。
アンドレアが面接を受けに来た時、ミランダは「インターナショナル・ヘラルド・トリビューン」を読んでいました。
そのファッションは、紫の洋服に大ぶりの赤いイヤリングとグリーンの指輪といったインパクトのある色使いのコーディネートでした。
また、ある日のストライプのジャケットの下には、深く開いたVネックのシャツに重ねづけされたネックレスにも、グリーンの大きめのペンダントが効いています。
ミランダのグレーヘアは、彼女のダークカラーの衣装にマッチしてとても素敵ですが、インパクトのある大き目のアクセサリーを用いることで、さらに華やかさが増しています。
年齢を重ねると、大きなアクセサリーをつけるのは気恥ずかしさがありますが、白髪の耳元で揺れる大きなワッカの赤いイヤリングは、さすがの圧巻です。

歴史ある作品からも学べる奥深いファッションの世界

「プラダを着た悪魔」は、ローレン・ワイズバーガーの同名小説をもとに制作されました。この作品は2003年に作られ、2006年に映画化されましたが、現代でもファッションを学ぶバイブルになっています。

ファッションと聞くとそのときのトレンドを意識しがちですが、積み重なってきた歴史から学ぶことも多々あります。この映画に登場するワンランク上のファッションを実生活にも取り入れて、センスを磨きましょう。