第1回 ファッションデザイナーの基礎知識:ファッションのはじまりとアパレル産業

先日、DOWマガジンの服と仲良くなる方法で「ファッションデザイナーの役割とは?仕事の流れをご紹介!」という記事をご紹介させていただきました。
ここでは駆け足でファッションデザイナーの仕事の概要とデザインの流れをお伝えしていますが、今回から「ファッションデザイナーの基礎知識」として、ファッションデザイナーの仕事をさらに掘り下げて、デザインの意味、役割、重要性をもっと身近に感じていただきたいと思っています。
ぜひシリーズ通してご覧になってみて下さいね。
第1回は「ファッションのはじまりとアパレル産業」です。

 

ファッションデザインはいつから始まったの?


ファッションデザインの始まりは150年以上前と言われていて、歴史を知るうえで欠かせない人物がシャルル・フレデリック・ウォルトです。

のちに世界で最も有名なファッションデザイナーになるウォルトは1825年にイギリスで誕生して、1838年からロンドンの生地店で働き始めます。
当時のイギリスで求められていたのは男性向けのデザインでした。紳士服が先行していたのがイギリスで、女性服はパリに遅れをとっていたのです。

ウォルトはどうしても女性向けのファッションデザインをやりたいと考えます。
そこで意を決してフランス パリに行き、言葉も国籍も異なる外国で大変な苦労をしながら実績を積み重ねて1858年にいよいよ自分の店を持ちます。
ここでウォルトは生地の仕入れ、デザイン、ファッションショーなど、デザインから販売までの全ての工程を一貫して行うシステムを採用しました。これがオートクチュールであり、ファッションデザインのはじまりと言われています。

また、少し前まではドレスを制作するにあたって女性のドレス作家が顧客の家を訪れて会話をしながら制作するという方法が主流だったのですが、ウォルトはここに改革をもたらし、顧客が自ら彼のサロンを訪れて注文する流れを作りました。これが時には女性の社交の場となったことは想像に難くないですね。

デザイナーがデザインした服をモデルに着せてコレクションで発表するといった流れを作ったのもウォルトであり、現在も継続されています。
1868年には「フランス・クチュール協会」も設立しました。

自分のブランドでデザイン活動を続け様々な功績を残し、1895年に亡くなりました。
ウォルトは現在も「ファッションデザイナーの祖」「オートクチュールの父」と称されています。

 

アパレル・アパレル産業とは?


洋服に関する仕事のことをよく「アパレル」「アパレル産業」と言いますが、アパレルはもともと衣料品を指す言葉で、特に既製品を表しています。
洋服の生産を専門にしている企業をアパレル企業と言い、小売店などを含めてアパレル業界と呼んでいます。

ファッションデザイナーが活躍する場もこのアパレル業界で、新しい洋服をデザインから企画して生産まで行うアパレルメーカーに所属して働くファッションデザイナーもたくさんいます。

ファッションとは?トレンドとは?

fashionを辞書で調べると”流行”という言葉が見つかります。
日本では特に衣服(アパレル)についての流行を指すことが多いですが、装飾品、ヘアスタイル、化粧品、時には人の雰囲気にも使う言葉です。
トレンドも同じく流行という意味合いで使われますが、「傾向」を意味する場合に用いられます。
ファッションが「流行」、トレンドは「流行の変化・傾向。時代の潮流」というところでしょう。

 

ファッションデザイナーの働き方

ファッションデザイナーが活躍するスタイルは2通りあります。

アパレルメーカーに所属する

所属するアパレルメーカーが企画するコンセプトに従って、新しい洋服をデザインしていきます。
アパレルメーカーでデザインするメリットは長く働きやすいことや、働きやすい環境が整っていること、会社員となるため安定性を得られることなどがあります。

自分のブランドを立ち上げてデザインする

フリーで活躍するファッションデザイナーになれば、自分がやりたい仕事だけを選んで引き受けることもできますし、自分のブランドを立ち上げてデザインすることも可能です。

フリーのメリットはなんとっても自由であることです。企業の制約を受けずにデザインすることができるので、大変な道のりですが大きなやりがいがあります。

実際は多くのデザイナーがアパレルメーカーに所属して仕事をしています。
安定した環境で未経験でも会社に育ててもらえますし、社会人に必要な一般常識を身に着けながらファッションの世界を知ることができるので、最初のうちはアパレルメーカーで頑張りながら将来を考えるのも良い方法でしょう。

 

ファッションデザイナーに必要な資格


ファッションデザイナーになるための資格はありませんが、持っていると役に立つと思われる資格はあります。

【ファッションデザイナー認定試験】
日本デザインプランナー協会によって実施されている試験で、ファッションデザインの知識が問われます。
ファッションに関する用語、デザイン、機能についての幅広い知識が必要です。

【ファッション色彩能力検定】
日本ファッション教育振興協会によって実施されています。
ファッションに関する商品や流通で問われる専門知識を、色彩の観点から検定されます。

【パターンメイキング技術検定】
日本ファッション教育振興協会によって実施されます。
自分の技術の実力を知ることができる検定です。取得しておくとパタンナーになりたい場合に有利と言われています。

【洋裁技術認定試験】
洋服を作るための技術がどれくらいあるのかを知ることができます。
日本ファッション教育振興協会が認定する教育施設で行われ、初級・中級・上級の等級があります。

 

ファッションデザイナーに必要な力


資格がいらないファッションデザイナーですが、仕事としてやっていくには欠かせない4つの力があります。

独創性と表現力

アイディアあふれる発想、今までなかった装飾や機能などを表現する力が求められます。

時代の先を予測する力

これから先の世の中でどのようなものが求められるのかを予測してデザインに取り入れていけば、みんなに愛される洋服を提供することができます。常に時代の先を見る力が求められます。

時代を分析する力

話題になっているものや流行っているものはなぜ人気となったのか?
その理由がわかればデザインに取り入れることができます。
時代を分析する力もデザイナーに欠かせない能力です。

コミュニケーション能力

ファッションデザインの仕事はひとりで行うものではありません。
新しい洋服はパタンナー、工場、営業などたくさんの大人と関わりながら作られていきます。
自分の内側にあるアイディアを洋服という形で表現するためには、情報や希望を正確に伝える能力も必要ですし、円滑なコミュニケーション能力もファッションデザイナーに欠かせない技術です。