ファッションデザイナー、クリエイターが知っておくべきファッションロー

DOWマガジンをご覧の方には洋服が大好きでこれからファッションデザイナーになりたい方、アパレル業界で活躍したいと考えている方も多いことと思います。
大きくグローバル化が進んだ現代においてはビジネスとしてアパレル・ファッション業界に進出するなら「ファッションロー」についての知識も欠かせません。

ここでは、ファッションデザイナーやアパレル業界に携わる人間が抑えておきたい法律や守るべき・守られるべき権利について解説します。

ファッションローとは?


ファッションローはファッションと法律(law)を組み合わせた意味の名称です。
ファッションプロダクト、ファッションデザインを始めとしたファッション産業では、時代の変化を敏感に感じ取って柔軟に対応しなければいけませんが、ここには守らなければいけない法律があります。

特に若いデザイナー、クリエイターの方はSNSをはじめとしたITツールの使い方に長けています。しかし、ファッションデザインにおける権利や、外部クリエイター、ファッションモデルとの契約など、法的な知識がないと知的財産を守ることができませんし、知らない間に他人の商標権などを犯してしまうことがあります。
法的トラブルになってしまうと国内の裁判だけでも大変ですが、海外のブランドから訴訟を受けてしまう可能性だってあります。
こういった問題を未然に防ぐためにこれからのファッションデザイナー、クリエイターなどアパレル業界で活躍する方にはファッションローの知識も必要なのです。

 

自分のデザインと他社デザインを守るために知っておきたい5つの権利

「著作権の侵害」とか「商標的使用ではないから商標権侵害ではない」などの言葉はニュースやネット記事で見かけたことがあると思います。
ここでは、ファッションデザイナー、クリエイターが必ず理解しておきたい5つの権利を確認しておきましょう。

1.商標権


商標権は、自身のブランドやロゴマークなどを保護するための権利です。
商標権による保護を受けるためには特許庁に商標登録をして審査を受ける必要があります。審査に通過して、登録料を納付すれば商標登録は完了です。

商標権を持っていれば、第三者が無断でデザインなどを使用した場合、製造・販売の差し止めを要求したり損害賠償の請求ができます。

 

2.著作権

著作権は著作物を無断で使用されないための権利で、複製権、上演権・演奏権、上映権、公衆送信権などの権利の総称になります。
著作物は著作者本人の感情や創造が表現されているものが対象となり、素人・プロ、上手・下手などは関係ありません。守られるべきものはあくまでも創造性です。

★著作物の例
デザイン、絵画、映画、楽曲、漫画、写真、芸術的建築、彫刻、書、地図、学術的図面、バレエ、ダンス、舞踏の振り付け、論文、講演、レポート、小説などなど

著作権は作者の死後70年間自動的に守られ、期間経過後はパブリックドメインとして誰でも自由に利用できるようになります。
ちなみに、この一定期間で権利が消滅する仕組みを活用してインターネット上で様々な著作物が読めるサービスが「青空文庫」です。

 

3.意匠権


意匠権は、新しい建築デザインやプロダクトデザインなどを保護する権利で、保護を受けるためには特許庁による登録が必要です。
登録を受けたら25年間デザインが保護されることになり、無断使用された場合に製造販売の中止や損害賠償請求を求めることができます。

実は、ファッションデザインにおいては意匠権とはあまり相性が良くないという考え方もあります。
ファッションビジネスではシーズンごとに新しいデザインと複数のアイテムが生まれますので、全てのデザインを意匠登録することはとてもできません。
じゃあ、「長期間売れそうなデザインだけ登録しておこう」と思っても、本当に売れるデザインは販売してみないとわからないため現実的ではないのです。

また、洋服などの新しいファッションアイテムが売れる期間は一般的には3か月間が多く、長くても6か月間となります。
しかし、意匠登録の出願から審査結果が届くまでに7~8か月程度かかることもあるのでタイムリーではないのです。

さらに、ファッションデザインにおいては、意匠登録の際にジャケットなのか、ワンピースなのか、パンツなのかなどカテゴリも指定する必要があります。
新しいデザインで生地を作ってワンピース、スカート、パンツ、ジャケットなどを作るならば、それぞれを登録する必要があるので、若手デザイナーが全てのデザインを意匠登録するのはコスト面でも問題があります。
もちろん意匠登録には大きなメリットもありますが、慎重に確認して判断する必要があると言えるでしょう。

 

4.パブリシティ権


パブリシティ権は氏名や肖像などを無断で広告利用されたり、グッズ化などの商業利用されない権利のことです。
芸能人やスポーツ選手、モデルなどの有名人が氏名や肖像を広告利用されて「芸能人の〇〇さんも使ってます!」のような広告を出せば顧客吸引力が働きますが、勝手にこういった広告を行ってしまうとパブリシティ権を侵害してしまいます。

ファッション業界においてはショーや広告撮影で、オーディション、リハーサル、バックステージなどの撮影を行うことも多いものです。撮影素材を二次利用する可能性がある場合は出演者にも同意を得る必要があります。

ちなみに「勝手に撮影されると困る」などのプライバシーが関わってくる場合は次に解説する肖像権に関わってきます。肖像権とパブリシティ権を合わせて肖像権と呼ぶこともあります。

 

5.肖像権


肖像権は自分を無断で撮影されたり、本人の許可なくインターネットなどで無断公開されない権利です。
肖像権は芸能人などの有名人だけの権利ではなく人間誰もが持っている権利になります。

肖像権は顔がはっきりと写っていなくても、本人と特定できる写真や映像などを勝手に公開した場合には抵触する可能性があります。
アパレル業界においては読者モデルや街頭で撮影する場合もあると思います。必ず本人から同意を得るようにしましょう。
また、個人で撮影した街フォトをSNSに掲載するときにも注意するようにしましょう。

 
今回ご紹介した「商標権」、「著作権」、「意匠権」、「パブリシティ権」、「肖像権」と、デザイナー・クリエイターが知っておきたいファッションローについては経済産業省がまとめている「ファッションローガイドブック2023について」に詳しく記載されます。
物づくりを行い、国内外に発表したい全ての方が知っておくべき情報がまとめられていますのでぜひご覧になってみて下さいね。