インフルエンサー系デザイナーの逆襲 vol.1 HIDOLATRAL THEODOL・高嶺ヒナさんインタビュー

デザイナーは、皆が有名なハイブランドで活躍しているわけではない。この記事では、ネットを中心に活躍しているデザイナーさんたちを特集します。

(高嶺ヒナさん公式Twitterより引用)

今回は、今までになかった「ストリート×ロリータファッション」をコンセプトに掲げるブランド「HIDOLATRAL THEODOL(イドラタール テオドール)」のプロデューサーでもある、インフルエンサーの高嶺ヒナ(たかね・ひな)さんにお話を伺いました。高嶺さんは2016年からコスプレやモデルの活動を始め、それを通じて多くの「バズる」発信をなされています。Twitterのフォロワー数は19万超え。その活躍ぶりが様々な媒体で取材される、令和を象徴する若き逸材です。そしてこのHIDOLATRAL THEODOLというブランドも、2021年11月15日に立ち上がったばかり。新進気鋭のブランドです。高嶺ヒナさんはストリート×ロリータの融合(略称・ストロリ)を掲げ、ジャージの生地でロリータファッションの象徴であるドレスを作ったのです。そんなブランドを代表するアイテムとして初期に発表されたのが「ANDLOID JERSEYDRESS」です。見たことのない新鮮さがSNSで話題を呼び、ストリート系とロリータファッションという、真逆のジャンルなのに調和している特別な1着です。ご自身がモデルを務めた写真を「偶像」とおっしゃる独特の世界観で多くのファンを持つ高嶺ヒナさん。そのデザイン性の神秘に迫りました。

(HIDOLATRAL THEODOL公式サイトより引用)

――ブランド創設(ディレクション担当)のきっかけは、どういったものだったのでしょうか。

ヒナさん : 人生における最強の戦闘服、をコンセプトにしました( HIDOLATRALは偶像(idolatry「偶像崇拝」から派生した造語)、 THEODOLは神の贈り物という意味です。ストリート×ロリータという全く真逆のジャンルを融合させた、斬新かつ唯一無二のアパレルブランドを展開したいと考えました。圧倒的な美を纏うこと。好きなものを貫くこと。自分自身を肯定すること。人生に生きづらさを抱える多くの人にとって、美しい希望となりますように。そんな想いから生まれたブランドです。

――メインのターゲット層にしている年代や性別はどこですか?

ヒナさん : 購買層のボリュームゾーンとしては若い女性が多いとは思いますが、性別関係なく自分の人生や好きなことを追求する、全ての方が対象です。現在レディース・ユニセックス商品の取り扱いをしており、今後ブランドが発展していけばメンズ向け商品も出したいな、と思っています。

――ご自身の手がけた商品で、気に入っているものはありますか?

ヒナさん : 思い入れの強さで言うとやはり「ANDLOID JERSEYDRESS」ですね。デザイン自体は2年前くらいからあったんですが、いかんせんこだわりが強いもので、形にするという点でかなり苦労しました。

商品の概要はこちら。

《アイテム概要》

高嶺ヒナが積年の想いを込めて届けたいと願い続けた、人生における最強の戦闘服。 HIDOLATRAL THEODOLが掲げるコンセプト「ストリート×ロリータ」を具現化した、斬新かつ唯一無二なジャージドレス。 「この予算では実現不可能」と制作を断られ続けたものの、こだわりを捨てずに試行錯誤を繰り返してついに完成した特別な一着。社会的風潮や流行に流されず、強くありたいと願う、全ての人間に向けた贈り物である。

(HIDOLATRAL THEODOL公式サイトより引用)

ヒナさん : あとはCyberJersey-Setupシリーズですね。これがバズって、モデル着画ではなくトルソー写真のみなのにTwitterで数万のいいねがついたのは、純粋に服が評価されたようで、デザイナー冥利に尽きるといいますか、すごく嬉しかったことを覚えています。 あまりにも人気すぎて、かなり在庫があったのに全シリーズがたったの数時間で全て完売してしまって、嬉しい悲鳴でした。多くの要望を頂いて、今年の6月下旬から7月頃に、既存のブラックシルバーに加えて、プリントにも拘った新色2色を追加での再販を予定しています。

 

商品の概要はこちら。

《アイテム概要》

「女の子が最高に可愛く見える丈」と着心地の両立が叶う、ジャージ×ロリィタというコンセプトのストレッチ素材の最強セットアップ!

大胆にあしらった、サイバー調のシルバーラインがポイント。

上下別でも格好良く着こなせます。

(HIDOLATRAL THEODOL公式Twitterより引用)

――ブランドの魅力はどこにあるとお考えでしょうか?

ヒナさん : ブランドの魅力は、やはりストリート×ロリータという、まだ誰もブランドテーマとして掲げたことのない「発想の斬新さ」だと思っています。一見真逆に見えるようなファッションジャンルですが、組み合わせてみると案外相性が良いということを、もっと皆さんに広めていけたらなと思います。いつかこのジャンルが流行って、ストリートロリータ(ストロリ)のパイオニアになることが、デザイナーとしての今の夢です。

――制作時に気をつけていることはありますか?

ヒナさん : やはりシルエットですね。特にセットアップやワンピース等の体にフィットする系のお洋服は、「女の子が最も可愛く見えるシルエット」を追求してデザインしたり指示を出したりしているつもりです。僕自身も美術専攻で、元々服を作る事もあったので、抽象的にこうしたい、というのではなく「ここはこのイメージにする為にこの生地でラインは~~ミリで袖丈は~~センチ、ギャザー幅は~~センチでお願いします」 というように、一回で出来るだけ具体的にイメージを伝えられるようにしています。あくまでも一点モノの個人制作ではなく量産する商品なので、そのあたりの知識とコミュニケーション能力はデザイナーにとって必要不可欠なのだなと、ブランドを立ち上げてみて思いました。僕自身の活動においてもデザインにおいても、主体的に「美しいとは何か」を常に追求していきたいと思っています。

(HIDOLATRAL THEODOL公式サイトより引用)

――ファッションを通して伝えたいことは何ですか?

ヒナさん : 「ファッションとは好きな自分を表現できるツールである」ということですね。僕自身も元々自分の容姿が好きではありませんでしたが、ファッションを通じて自分の大好きなお洋服に釣り合う自分になりたいと研究を重ねて、今の”高嶺ヒナ”という偶像になりました。ありふれた形容になってしまうのですが、「好きという気持ち」が生み出すパワーって本当に強いなと、アパレルに関わるようになって再認識しました。テオドールのデザインは急に「あ、これ着たいかも」という感じで突発的に思いつくものもあれば、ずっと何年も温め続けていたものと、両方あります。どちらにも優劣は無いのですが、形にするのにこだわりがかなり強く、何度も修正を繰り返すので、必然的に新作を出すスピードは、他のブランドと比較しても遅くて少ない方だと思います。でも、そのぶん出す服全てに対して妥協なく、自信を持ってデザイン・提供しているつもりです。 最後になりますが、理想のお洋服を身に纏う事で、単純な見た目だけでなく精神的にも良い作用があると考えているので、これからも僕なりのペースとアイデアで「最強の戦闘服」を提供していけたらなと思います。

お人形のようなロリータファッションに調和する部分と、ストリート系ファッションが似合う部分。高嶺ヒナさんのなかにそのふたつの側面が存在していて、それが調和した瞬間にこのブランドが誕生したのだと感じました。

幼少期からデザイナーになることや、ロリータファッションが好きだったという高嶺ヒナさん。ご自身のコンプレックスも力に変えて、ドール系のモデルとして活躍し、現在も様々な媒体でその活躍が報じられます。その影響力の強さの裏には、彼女なりの「好きなもの」を追求したいという純粋な想いがありました。これからもHIDOLATRAL THEODOLからは目が離せそうにない。インタビューのご協力、ありがとうございました。

ライティング:長島諒子