インフルエンサー系デザイナーの逆襲 vol.3 MIKI SAKURA・櫻さんインタビュー

デザイナーは、皆が有名なハイブランドで活躍しているわけではない。この記事では、ネットを中心に活躍しているデザイナーさんたちを特集します。

(出典:MIKI SAKURAさん公式Twitter)

今回はレース素材の着物やふわふわの帯で人気のブランドMIKI SAKURAさんにインタビューさせていただきました。日常的に着物を着ている人って、なんだか素敵ですよね。かつては着物がスタンダードだったのに、今では珍しくなってしまいましたが、こちらのブランドの着物は「ワンピースの上から着ちゃっても大丈夫です!」という斬新なもの。デザインも可愛らしく、簡単に着られて、なおかつ大人の女性にも響くレディなロマンティックさが大ヒットし、現在もデザインフェスタなどの即売会で大盛況のブースになっています。昨今では衰微が激しい着物業界で、そもそもなぜレースで着物を作ろうと思ったのでしょうか? その秘密に迫ります。

 

デザイナー略歴

デザイナー氏名 : MIKI・櫻

「櫻メゾン」というブランドから、さらにコンセプトをしっかり作った「MIKI SAKURA」を2017年に立ち上げ、現在に至る。

 

――ブランド創設のきっかけは何だったのでしょう?

櫻さん : 私自身の「あったらいいな」という思いがスタート地点にあります。帯ですと、簡単に結べたり、つけられたりする、可愛い帯があったらいいなとか。そんなふうに、自分の作りたいものを形にしています。

 

――メインのターゲット層はどこですか?

櫻さん : 10代から70代くらいの女性向け。幅広いターゲット層です。

 

――ブランドで気に入っている商品はありますか?

櫻さん : すべて気にいっています(笑)看板商品でもあるレースの着物はもちろんですが、特にオリジナル商品のふわふわ帯(作り帯)・ドレッシー帯・楽帯は、前述した私の「こんな商品があったらいいな」という想いから生まれたアイテムなので、お気に入りです。

 

――ブランドの魅力はどこにあるとお考えでしょうか?

櫻さん : 可愛いけれど、可愛すぎないところや、フェミニンなアイテムが多いところに魅力があると思っています。お洋服(ワンピース・ブラウス・パンツなど)の上からでも着て頂ける着やすさも、魅力の一つなのかなと思います。でも一番大切なのは、「可愛い」ということ。私自身の感覚頼りになりますが、華やかで可愛いけど、少しだけ控えめに……上品だけど遊び心もあって、みたいな感じです。

 

――制作時に気をつけていることはありますか?

櫻さん : 「可愛い!」と、自分で商品を作っているときに、声に出して言えるものを作ることです。実際に声に出ます(笑)

 

――ファッションを通して伝えたいことは何ですか?

櫻さん : 素敵な日になるように、という想いを込めています。何気ない日常を、この着物で素敵な日に変える感じかな。素敵な日が特別にあるのではなく、私のブランドのファッションを通して、素敵な日に変えていくのです。可愛いものを身にまとうと、人って幸せな気持ちになりますからね。

 

フランクでさばけたところが魅力の櫻さんにお話を伺っているうちに、私もレースの着物が欲しくなって現在オーダーの予定を立てています。私の「特別な日」のために、勝負服にしたい! と思ってのことなのですが、普通の和服専門店で新品のものを購入するよりも、予算が安く抑えられるところがとても良いなと思っています。だいたい5万円で着物が買えます。単も袷もあってこのお値段です。しかも下に着るのはワンピースなど、普段着ているお洋服でOKというところも、櫻さんの「楽ちんに着られて可愛いものがあったらいいな」という想いから生まれていると思うと、非常にありがたい気持ちになります。主力商品のふわふわ帯も3万円台からの販売です。

 

商品詳細は以下。

 

《アイテム概要》

女性の憧れのレース。

レースを身に纏うだけでどこか女性らしい品格を表現してくれます。

中の長襦袢や着物やワンピースなどで雰囲気を変えて頂けます。

レース着物は、一期一会のお品が多いので

気になった方はお早めに。

(出典:MIKI SAKURAさん公式Twitter)

着物のレースも、自分で柄を選べますし、実際に振袖や浴衣などでオーダーされる方も多いそうです。やっぱり誰とも同じものではない、個性が出せる、差をつけられるという点でこのレース着物は非常に人気が高いのです。私も自分の特別な日に向けて、今レース生地をどれにするかで迷っています。市販の帯との相性もいいですし、帯留めのオーダーも可能だそうです。

 

ブランドコンセプトも、公式サイトにはこのように書いてあります。

 

美しい女性になる為にいるために

身に纏うものはとても重要だと思っております。

お洋服に着物…その日に身に着けるものによって、

気分も変わると思います。

MIKI SAKURAのアイテムを身に着けたら、

見た目も美しく、明るい気持ちになれたらなと思っております。

(出典:MIKI SAKURAさん公式Twitter)

着物という、着用ハードルの高い装いを、ここまで全面的に押し出したデザイナーさんはなかなかいらっしゃらないと思っています。そのなかで櫻さんの創作された「レース着物」「ふわふわ帯」は、洗練された美しさがあり、全体のバランスも計算されていてデザイン性も高く、機能性に優れています。着物界からもセンセーショナルに受け入れられること間違いなし。非常に先駆的な存在だと言えるでしょう。それはすべて、櫻さんの「こんなものがあったら、きっと喜ぶ人がいる」という優しさや、「こんなものがあったら、私はとても嬉しい」という愛情から始まったもの。とても素敵ですよね。私も櫻さんとお話をしていると、その懐の深さや情の篤さに驚くのですが、デザイナーさんが思いやりをもって作品を制作しているからこそヒット商品が生まれるのだということを肌で感じます。

着物は日常で着てもいい、もっと楽に、ラフに、普段使いできるものであっていい。そんな櫻さんの願いが込められた商品が、私のもとにも届きます。それが今からとても楽しみなのですが、それ以上に「これを着てどこへ行こう」「これを着て何をしよう」と、何気ない日常がワクワク、うきうきしたものに変わっていくのを実感しています。これは櫻さんのファッションで伝えたい想い、願いと通底したものがあります。温かな想いを受け取る、そんなブランドづくりをしていらっしゃると感じました。

(出典:MIKI SAKURAさん公式Twitter)

櫻さんの作る着物や帯から「ファッションで表現できる個性の幅」が広がったように感じます。今では「量産型」という言葉もありますが、ファストファッションの浸透などで「誰かと同じ服」を着ることが主流になっている風潮もあります。けれど、ファッションは自分の個性を主張するためのツールです。櫻さんのレース着物やふわふわ帯で、相手に与える印象が変わったり、自分の中に秘められた側面が解放されたりと、たくさんのプラスの側面が生まれるはずです。個性は己の中に無限に存在するもの。着物で演出できる「わたし」像も、きっと素敵なものになる。櫻さんの作品はそう思わせてくれます。私もオーダーした着物が届くのが楽しみです。取材協力ありがとうございました。

(ライティング:長島諒子)